MDFハトメ鍵札の製作

忘年会の折に教頭よりレーザー加工機で学校の鍵札の作り直しを依頼され,いろいろ調べてみたのですが,学校にある5Wの簡易レーザー加工機(Podea Type-F 5W https://www.podea.net/ )は2.5mm厚のMDF板をようやく切り抜く程度の性能しかなく,MDF板に刻印するしかありません。教頭からの依頼の理由は,鍵札が小さすぎて紛失してしまう人が後を絶たないということでした。大きめの鍵札をレーザー加工機で加工したことで製品並のクオリティーで仕上げることができました。

2.5mm厚のMDF材を使うことにしたのですが,MDFでは穴をあけてもその穴から破壊してしまう可能性が高いため,補強をということで,ハトメをつけてみることにしました。2.5mm厚のものにハトメをつけるためには,8mmハトメ(穴の内径は6.0mm)を使う必要があります。中心が札の端から7mmぐらいならば写真のようにリングもはまります。ぎゅっと握っても板なので布や紙のように変形しません。あとはげんのうでたたいて平らにしました。

札の大きさは40×100×2.5です。二次元CAD(フリーの二次元CAD,AR_CADを使ってます。http://www.ar-cad.net/ )を使って四角形を描き,角を半径10で丸めます。リングの穴は端から7mmを中心として,直径7の穴をレーザー加工機であけてしまいます。私の場合これを6枚一度に切り抜きました。出力の大きなレーザー加工機をつかえれば加工は一瞬,1分とかからないでしょう。しかし,5W簡易レーザー加工機では6枚を切り抜くのに30分以上かかります。ただし,セットすればあとは加工が終わるのを待つだけで精度よく加工できてしまうのがデジタル加工機の素晴らしいところです。

その後文字をレーザー刻印して,写真のように完成しました。

 

個人でもCAEを使って解析できる時代

鍵札にMDFを用いて,しかも普通は使わないようなハトメで補強した時どれほどの強度があるのか試してみました。コンピュータで解析するなんて個人ではできないというのが私のこれまでの常識でした。しかし,個人の場合実質無料で使えるFusion360( https://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/overview )を使って解析できるらしいと知り,大学時代に学んだ有限要素法の知識がよみがえります。あれが自分のPCで試せるなんて正直信じられないと思いながら,日刊工業新聞社から出版されている「Fusion360でできる設計者CAE」水野操さんの著作を入手し,冬休みの課題としてMDFハトメキーホルダーの解析に挑戦してました。

尻込みしているみなさんに声を大にしていいたいです。大学の授業で有限要素法を私のようにほんの少しでも聞いた記憶のある人なら,この程度のことが2時間程度でできしまいます。ビックリするくらい簡単です。CADで形状を与えた上で,素材と拘束と荷重の設定と,あとは単位を間違えないようにするだけで,安全率まで計算できてしまうのです。クラウドで計算させれば,手元のPCはそんなに高性能でなくても大丈夫なのも私のような8年も前のPCを現役で使っている者にはありがたい限りです。

今回の場合ハトメで穴の周辺を固定すると考えて,穴の内壁を拘束してみました。以下の与えた荷重は,以下の2通りです。

左図◆キーホルダーの一番下の端の面を引っ張った場合,210N(21kg重)ぐらいは耐えるらしい。
右図◇キーホルダーの左右の端の面を上下に引っ張った場合,それぞれに4.6N(0.47kg重)までしか耐えられない。

MDF中密度繊維ボードなる設定を選んだわけですが,これが使用するMDFと全く同じ設定になっているとはおもえずあくまで参考で,実験して確かめてみなければわからないかとは思います。しかしはっきりしたことは,やはりねじりにとことん弱いという事実,重さには耐えると思いますが,ねじり方向に力が加わりにくい改善策を考える必要がありそうです。(モーメントで与えてもよいかと思ったのですが現実の使い方に近いところで荷重を設定してみました。)これを使うから,機械の形は変わっていくのですね。鋳造などで仕上げることを考えると,肉厚が必要以上に厚くならないようにすることなど,これを使えば数値的に計算できちゃいますね。ビックリです。個人でもいよいよシミュレーションを活用できる時代になりました。

 

同じ品質のものが製作できる

MDFを切断するだけなら,わざわざレーザー加工機を使わなくてもよいと考えるのが普通です。しかし,CADのデータがあればいつでも同じものが加工できてしまうのはとっても素晴らしい。鍵札を1枚つくるだけなら手作業と代わらないでしょうが,今回は学校の鍵札を全て入れ替えることになりますから,30枚を超える札を製作したことになります。同じ品質のものをこの程度の数加工するのにデジタル加工機は最適の加工法といえますね。


投稿者 : 川俣 純(茨城・中学校)


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