たった1ヶ月で消えた幻のAkaDako
【PR記事】AkaDako物語 第2回 ※第1回はこちら
たった1ヶ月で消えた幻のAkaDako
~半導体危機とリンゴの城壁~
みんないい笑顔ですよね。これは2023年3月、AkaDakoの2代目「探究ツール」が完成したときの、タコ焼きパーティーで撮った写真です。この写真を撮ってくれたのが、AkaDakoのハードウェア開発の立役者である開発部長 森田くんです。
この最強メンバーと、写真には写っていないNPO法人タイプティーを初めとする数百人の先生方、千人を超える子どもたちの協力が得られなかったら、間違いなくAkaDakoは2代目にたどり着くことはできませんでした。 いや、たどり着く前に、僕の心が折れていたと思います(笑)。そう、この笑顔の写真にたどり着くまでには、多くの苦難がありました。
前回は、僕が教育の「沼」にハマり、理想と現実のギャップにぶち当たったところまでお話ししました。今回はこのタコ焼きパーティーより時を少し戻し、理想のフィジカルコンピューティング教材を追い求めた先で、立ちはだかった「壁」についてお話ししようと思います。
■目指せ!「矛盾」を叶える理想の教材
僕の中でmicro:bitは一つの理想形です。でも、90分の研修を受けただけじゃ、多くの先生方は実践には至らないという現実を目の当たりにしました(僕の研修がヘタクソなせいも大いにあります😅)。
ここで「じゃあ、micro:bitより簡単な教材を作ろう」と考えるのが普通です。でも、思い出してください。前回、教室に響いた「えー!もっとやりたーい!」という子供たちの声を。 あの声の本質は、
「自分のアイデアでスゴイものが作れちゃった! なにこれ!?超楽しい♪」
という驚きと興奮にあったと思うんです。
つまり、簡単なだけじゃダメなんです。
僕が目指すべきは
「簡単なのに、めっちゃスゴイものが作れちゃう」
という、明らかに矛盾した教材なんです。
■日本の子どもたちは、すでに「最強の武器」を持っていた
2020年。約4,800億円という巨額の国費が投じられ、GIGAスクール構想がスタートしました。 そう、日本の全ての子どもたちの手元には、世界がうらやむGIGA端末があるんです。日本版micro:bitを考えた時、これを活かさない手はありませんよね?
中学校技術で使われているフィジカルコンピューティング教材は、デバイス側に制御主体があるのが主流です。 学びとしては、スタンドアロンで動かす体験はとても大切だと思っています。でも、制御主体をGIGA端末側にしちゃうとですね…
☑授業でのつまずきポイント「ダウンロード」不要になる!
☑カメラ・マイク・スピーカーがフルに使える!
☑インターネットが使える→AI・IoT・各種クラウド連携ができちゃう!
☑小さなマイコンとは比較にならない圧倒的なパワーが使える!

これ、めっちゃスゴイものが作れちゃうと思いませんか?
さらに、GIGA端末側のアプリを進化させて行けば、マウスやキーボードのように、10年後も20年後も現役で使われているデバイスになるかもしれない…
こうして、GIGA端末のポテンシャルをフル活用し、クラウドと連携する夢の教材づくりへの挑戦がスタートしました!
■プロトタイプ、2ヶ月で爆誕。「ものづくりは人」
実は僕、ハードウェアは得意じゃーありません。プログラマーとしても、正直ポンコツです💦ハードウェア設計は優秀な開発部長 森田くんに任せればいいとして、問題は「ソフト開発は誰がやるの?」でした。
そこで僕が取った行動が…今思うと、なかなか無謀です。会ったこともないのに、いきなり有名な横川さん(Micro:bit MoreやXcratchの作者)にFacebookメッセンジャーで、こうお願いしたんです。
「XcratchとGroveデバイスをWeb Serialで接続するScratch拡張を作りたいんです!力を貸してもらえませんか?」
するとどうでしょう?なんと一発OK! 返事が来た瞬間、森田くんと2人でメッチャ喜んだのを今でも覚えています。(※ここで少しだけ補足すると、Groveは入手性がよく安価なセンサー・アクチュエーターの規格で、Web Serialはブラウザとデバイス間でシリアル通信を行うための仕組みです)
時はコロナ禍まっただ中の2021年10月。リアルでは会わない形で横川さんと森田くんの開発がスタートしました。そしてですね…なんとたった2ヶ月でプロトタイプが完成してしまったんです。
「はっ、早すぎる…」
完成した動くデバイスを見ながら、僕は心底思いました。やっぱり、ものづくりは「人」なんだなぁ、と。
こうして爆誕したプロトタイプをもとに、青山学院大学の阿部先生、Stretch3の石原さん、サヌキテックネットの泉保さんといった強力な助っ人にアドバイスをもらいながら、僕らはさらなる改良へと突き進んでいきました。

また、発売に向けて、石原さんがAkaDako拡張をStretch3に登録してくれたおかげで、より多くの人が使える環境が整いました。
■2022年2月28日 初号機発売!
鳴らない電話で凹んでから2年。プロトタイプ完成から2ヶ月。ついに、AkaDako初号機を発売することができました! プレスリリースを発表し、「ああ、ようやく世に出たんだ」と実感した瞬間でした。

当時のプレスリリース
■小学校の先生方から厳し~ぃダメ出し
早速、仲の良い先生方に「試食(テスト)」をお願いしました。コロナ禍のため、機材を事前に先生宛に郵送してZoomで説明会を行うスタイルです。打診に対して多くの先生が快く手を挙げてくれました。生の声を逃さぬよう、少人数の説明会を連日連夜、開催し続けました。
結果、概ねは好評だったのですが…主に小学校の先生方から多くのダメ出しを喰らいます。

「高松さん、これ、配線どこに挿すか絶対迷いますよ」
「40人の生徒相手に正しく配線させるだけで授業時間の半分が終わります」
「授業前後に1人4個✕40人分=160個センサーを数える? 無理です、時間無いです」
「センサーバラバラだと、絶対無くすし、子どもたちが落として踏んづけて壊します!」
やっぱり教員経験のない技術屋はダメですねぇ~
「限られた時間の中、40人の子どもたちを相手にワンオペで格闘する戦場」
のことを全くわかっていなかったんです。
先生の負担を軽減するどころか、逆に先生の負担が増えてしまうことがわかりました(反省…)
■わずか1ヶ月で製造停止!
発売からまだ日が浅いある日、森田くんが深刻そうな顔で言いました。
「…中国で確保しておいたチップ、無くなりました」
その瞬間、僕は言葉が出ませんでした。実は試作段階から、世界的な半導体不足という暗雲が立ち込めていたんです。AkaDako初号機の心臓部にはATmega328Pというチップが使われていました。試作開始当時の仕入れ価格は1個0.8ドル(当時1ドル=約110円)でした。量産に向け、事前に中国の業者にまとまった数の確保をお願いしてありました。ところがです。いざ購入しようとすると返ってきたのは、冷たい一言。
「在庫なし」
慌てて他の業者にも当たりましたがどこも在庫なし…。あっても、ひどいところだと 1個105ドル。日本円で1万円以上ですよ!? 元値(0.8ドル)の100倍以上です。これでは、日本中の子どもたちに届ける安価な教材なんて作れるわけがありません。
結局、発売からわずか1ヶ月で製造停止。
AkaDako初号機は、文字通り「幻」になってしまいました…。(泣)
■iPad有線接続計画が頓挫
さらに追い打ちがかかります。初号機は、GIGA端末の3OS(Windows・Chromebook・iPad)のうち、iPadだけ未対応のまま見切り発車していました。 iPadは学校現場でも一定の割合を占めています。つまり、「相当数の子どもたちがAkaDakoを使えない」状態です。放置できるわけがありません。
問題はiPad接続の定番はBluetooth。そう、先生方ならお分かりですよね? 「40台のiPadを一斉にBluetoothペアリングする」という地獄絵図を。 隣の子のデバイスに繋がっちゃったり、接続が切れたり…想像するだけでカオスです💦
これじゃぁ「先生の負担軽減」どころか「先生の寿命短縮」です。
また、Bluetooth接続という事はデバイス側の電源問題があります。デバイス1つに電池が2本必要な場合、40人分となると80本の電池が必要となります。この管理、やりたくないですよね?
そこで僕らは「iPadでも安定した有線接続(通信・給電)」を目指しました。 iPad用Scratch専用ブラウザ「Scrub」の開発者・大庭さんにお手伝いをお願いし、数百万円とも言われるAppleのMFi認証取得(iPhoneやiPadとつなぐための公式ライセンス)に挑戦することにしたんです。
ところがです。申請手続きを進めるうちに、ある異変に気づきました。 なんと、MFi認証の申請画面に、シリアル通信デバイスの選択項目が見当たらないんです。そう、Appleはシリアル通信デバイスのMFi認証の受け付けをやめてしまっていたようなんです。先生の負担を軽減するためにも、安定した有線接続による通信・給電は不可欠だと思っていました。Appleによりそのハシゴを外された形です。

…詰んだ。 完全に詰みました。
■静まり返ったオフィス
先生からのダメ出し、製造停止に続いて、iPad有線接続の夢も、Appleの壁により頓挫してしまいました。
AkaDakoの開発もここまでか…
小さなオフィスで森田くんと僕は呆然としていました。
子どもたちに届くはずだった部品実装前の赤い基板が、作業台の上に置かれたまま、やけに鮮やかに目に刺さりました。

しかし、物語はここでは終わりません。この絶望的な状況から、僕らはどうやって巻き返したのか――続きは次回をお楽しみに!
【筆者プロフィール】
株式会社ティーファブワークス 代表取締役 高松基広
連載:子供の科学「AkaDakoものづくりラボ」(誠文堂新光社)
編集協力:
中学校教科書「新しい技術・家庭」(東京書籍)
高校教科書「情報Ⅰ」(開隆堂)
著書:「micro:bitであそぼう!」(技術評論社)
発明・開発:天板拡張くん、ふきだしくん、AkaDako、他
Facebook : https://www.facebook.com/asondemita
※友達リクエスト大歓迎ですがメッセージを必ず添えてくださ~い!
【AkaDako】
公式サイト: https://akadako.com
教材集: https://699.jp
無料オンライン研修: https://699.jp/6 ※教材付き
コミュニティ:https://www.facebook.com/groups/akadakoforeducation
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お問い合せ:https://akadako.com/contact/
【イラスト】
青空とんぼ https://x.com/Tombo_Aozora

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