木材の断面観察

1.はじめに
中学校 技術・家庭科(技術分野)の「材料と加工の技術」分野において,木材の特徴を学習する。木材 は,生活のあらゆる場面で材料として使われることが多く,その特徴を知ったうえで加工しなければ,木材 製品の良し悪しが左右される。また,製作実習で生徒が目にする木材は,既に加工され板材として提供されている。木材は,植物を加工 したものである。理科の授業では維管束として,道管や師管など何本もの束となって存在していると説明を 受けるが,技術の授業では,繊維として構造の説明を受けることになる。
ここでは,繊維方向により強さ弱さを生じることを説明して,強い構造体を作る工夫ができるように,木材 の特徴「繊維方向による強さ弱さ」を例示する教材を製作した。

2.年輪
樹木の幹の断面には,同心円状の年輪が見える。年輪の中心を髄といい,この髄を起点に外側に向けて樹木が成長する際,季節により成長の度合いが異なる。春から夏にかけて成長した部分を早材(春材)と いい,夏から秋にかけて成長した部分を晩材(夏材)という。
年輪は,春夏秋冬の季節がある日本において形成されるものであり,赤道直下で成長するバルサには年 輪がない。また,髄の位置は,幹の断面の中心から少しだけずれている(写真1)。太陽に照らされる南面の成長は大きく,北面の成長は小さい。したがって,年輪を見るだけで樹木の植わっていた位置や方向がわかる。樹木の成長が年輪に示され,かつて大工は,木から材料を切り出すとき,柱の位置や方向を樹木の植わっていた自然の位置や方向に合わせることにより,ひずみの少ない建物を作ったそうだ。

写真1 年輪

3.板目と柾目
木材を繊維方向に切断すると年輪の模様が木目となって現れる。板材は,切断の仕方,木材の部位によって板目材と柾目材になる(写真2)。 年輪に対して,接線方向に切断した板材を板目といい,木目の模様は山形などになる。また,年輪に対して,直行方向(半径方向)に切断した板材を柾目といい,木目の模様は平行になる。

写真2 年輪の木目
なお,繊維方向に切断した断面の板目(写真3・4)と柾目(写真5・6)を示す。この写真から見ても板目と柾目の見極めは,こぐちを見ないとわからない。こぐちを見て,木目が山形になっているものが板目であ り,木目が平行になっているものが柾目である。
こ こで,木材の収縮と変形について記す。板目は,木表側と木裏側の部位における維管束の密度を見る と不均一であり,維管束が少ない木表側に反るため,変形しやすい特徴がある。逆に,木表側と木裏側の 部位における維管束の密度が均一である柾目は,反りにくく変形しにくい。
一般的に,接線方向(板目),半径方向(柾目),繊維方向の収縮率の比は,10:5:0.5~1 と言われて いる。そこで,木材の収縮と変形の特徴より,1本の樹木よりたくさん切り出すことのできる板目材は,柾目 材より安価である。


写真3・4 板目材(こぐちの木目が山形になる)

写真5・6 柾目材(こぐちの木目は平行になる)

4.すえともと
板目材の繊維方向に切り出した木目を見ると山形になっている。これは,樹木の成長する方向が現れた ものであり,山形の尖っている方向を「すえ」といい,樹木の先端方向(上方向)であり,こずえに近い方向 である。また,逆の方向は,根元に近い方向(下方向)であり「もと」といわれる(写真7)。


写真7 すえともと

5.まとめ
木材の断面観察を行ない,木材の特徴を記した。自然界における樹木の生育と関連して,木材の構造,繊維方向と強さ,収縮と変形などの木材の特徴を理解することができる。どのような製品を製作する場合 でも,材料の特徴をよく理解して行うことが大切である。材料の特徴を活かした設計により,生活に用いる 製品を製作することは,その製品品質を向上させることができ,製品寿命を長くすることができる。
持続可能な社会を実現するためのヒントとして,木材を循環させる社会のサイクル(植樹~伐採~加工~ 製品~廃棄~焼却)を長いサイクルとすることも大切な要素の一つであると考える。


投稿者:村瀬吉孝(兵庫県)

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