「身近な製品のプログラムをフローチャートで考える」
本教材は,日本産業技術教育学会のロボコン委員会が主催した中学校技術科と高校情報の研究会で発表した資料の転載です。
今回の実践では,計測・制御のプログラムを作成する授業に重点を置くのではなく,現実の製品や装置がどのようにプログラムされ,計測・制御されているのかを考えさせるための十分な授業時間を確保した。さらに,今回の実践では,4人組(男子2人,女子2人の市松模様)でのグループ学習や,成果発表(授業中の簡単なプレゼン)などを行わせることで,互いの意見を聴き合い,互いに学び合う授業を展開した。 夏休みの宿題として提出させた「プログラム解析報告書」には9割を越える生徒が身近な製品や装置のプログラムの働きをフローチャートで表し解説することができていた。
使用した教材: 山碕教育システム 自律制御ロボ2※ライントレースセンサ付き
※既に廃盤の教材,現在販売されているプロロボでも同様の実践が可能。
※付属のソフトを用いることで制御プログラムをフローチャートで作成できる。
授業後の生徒の感想
夏休みの宿題として提出させた「プログラム解析報告書」は9割以上の生徒がフローチャートとその解説を書いて提出することができた。報告書には「記入して気付いたこと,わかったこと」を書く欄が設けられている。以下にあるクラスの10人分のピックアップを列記したい(タイトルは筆者)。
●身近なところにプログラムあり
・いつも利用していて,センサーが反応して動くということは知っていたが,反応してから,どのように動くか(ど うして動くか)など,知らなかったので,このようなプログラムの解析方法を学び,自分で何となく理解でき, 良い機会になった。どの機械もプログラムされていることがわかった。でも,フローチャートをつくるのは難し い。
・今回は自動改札機で「切符でいく」という条件のついたプログラムを解析しましたが,条件がついていてせまい 中でも様々なプログラムが入っていることがわかりました。普段何気なく数秒で起こっていることもたくさんの プログラムが入っていて,私たちの生活に役立つように工夫されていることを実感しました。
・身のまわりの電子機器をフローチャートにするのは,すごく時間がかかった。今回調べたUFOキャッチャーよ りも,もっと複雑な動きをするようなモノは世の中にたくさんあるのだから,命や意志を持たないものを動かす のは難しいなぁと思った。
●プログラミングする人を尊敬
・たった,一つのことを自分で考えるだけでもたくさんのプログラムが入っていて,全部やると気が遠くなりそう で,プログラミングの人はすごいなと思った。でも楽しかったからよかった。
・やりたいことは簡単で,言葉に書き表すのも簡単なのに,フローチャートを書こうとするととたんに,とても難 しくなってしまったので驚いた。「経過時間」のアイディアが出るのにも時間がかかってしまい大変だった。プ ログラミングをする人を尊敬したい。
・今世の中にたくさんのプログラムされたコンピュータがあるけど,一つ一つ作る時間がすごくかかっていて自動 ドアやテレビ,冷蔵庫ができているからすごいと思った。これを考えている人は,安全,快適(便利)などいろ いろ考えてプログラミングしている。
●フローチャートからわかるプログラムの特性
・複数のセンサーがついている時は,フローチャートも複数必要なのかなあと思っていたが,一つのフローチャー トで全部表せたので,とても驚いた。プログラムをつくるという視点から見ると,どの製品にもたくさんのプロ グラムが組み込まれていると分かり,驚いた。
・ぶつからない理由がわかった。距離や速度で警報を鳴らすなど,とても安全な車だとわかった。とても難しい仕 組みだと思ったけど,フローチャートにすると自分でも理解することができた。
・手順の繰り返しが多く,一つの手順が終わらないと次に進めない。たくさんの手順を一つのフローチャートで表 すと枝わかれが多くなる。
・こうしてフローチャートを記入していて,プログラムは「条件分岐」とその後の動作で成立していることに気付 きました。冷静に考えてみると,多分どの機械のプログラムも「これがこうだったらこうする」の塊,ただそれ だけなんでしょうね。機械って意外と単純だなぁ・・・
意外と単純と書く生徒,やっぱり難しいと書く生徒,生徒の実感は様々であったが,概してフローチャートで身近な製品や装置の計測・制御プログラムを考えたことは,彼らにとってこれまでにない新鮮な経験であったことがわかる。
何より彼らの気付きやわかったことが,「プログラミングがわかった」といったような狭い内容ではなく,今現実に社会を支えているプログラムと計測・制御の技術について考えたことを中心に書かれている。
最低限のプログラミングの経験の上に,グループ学習や簡単なプレゼンなどの学び合い活動を取り入れることで,現実の製品や装置のプログラムとその果たす役割を考えさせることは十分に可能だ。
投稿者:川俣 純(茨城)
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