綿の栽培日記(綿花)
中学校技術・家庭科(技術分野)「生物育成の技術」における栽培の対象物として、比較的手入れが簡単で成果物が大きく、衣類として生活に関連する「綿」を栽培したので、その栽培日記として報告する。
種は、近隣のホームセンターで入手可能であり、株式会社トーホクの「わた花」を購入して栽培した。
2.特徴(*1)
ワタは、ハイビスカスに似た花も美しいのですが、花がしぼんでから1か月ほどで果実が割れ、中からコットンボールが見える姿がユニークで人気があります。白いワタだけでなく、緑、青、茶色のものがあります。また、草丈60cmくらいにしか伸びないドワーフコットン(矮性種)や葉の赤い種類もあります。
白ワタの種類は、結実後、秋に比較的果実が開きやすく、白いコットンボールを観賞できます。しかし、茶色や緑色のワタは、晩生なので、気温が低下すると果実が開かない場合が多くあります。そこでタネの遅まきは避け、摘心をして株の勢いを弱めて、わき芽を伸ばすようにして育てると、早く花が咲くようになります。
初期生育が遅く、双葉が展開してから草丈10cmくらいになるまでが、栽培の最も難しい時期です。このころに過湿にすると、根腐れが起こりやすくなります。梅雨どきの育苗では、水はけのよい土で育てるのがポイントです。梅雨が明けて気温が高くなると、元気になってぐんぐん成長し、7月から8月に開花し、9月から10月に果実をつけます。
3.基本情報(*1)
(1)園芸分類:草花
(2)形 態:一年草(本来は多年草)
(3)原産地:熱帯、亜熱帯地方(アジア、中南米)
(4)草丈/樹高:60cm~150cm
(5)開花期:7月上旬~11月(花と綿の観賞時期)
(6)観賞期:7月上旬~11月(花と綿の観賞時期)
(7)耐寒性:弱い
(8)耐暑性:強い
4.育て方・栽培方法(*1)
5.栽培のポイント(*2)
(1)適地
排水のよい砂質の壌土、又は水はけのよい土で、風通し、日光のよく当るところがよい。あまり肥料のきいた所は、枝ばかり伸びて蕾(つぼみ)が落ちたり、実が落ちたりするほか、病害虫の発生が多くなる。やせ地でも施肥に注意すればよい。また、酸性土壌をきらう(弱アルカリ性がよい)ので、種まきの1週間前に石灰を加え、土を中和しておく。
(2)種まき
覆土は種がかくれる程度に薄目にかける。灰をまぶして播くと発芽がよいといわれる。発芽適温は
20~25℃。5月~6月が播種の時期である。
地植えの場合は、畝幅(うねはば)を70~90cmにし、50~60cm間隔ぐらいに2、3粒ずつ播く。発芽後間引きをして、元気のいいものを1本残すようにする。鉢植えの場合は、5~6号。水はけをよくしておき、1鉢に3粒播き、発芽後、間引いて1本にする。苗床またはビニールポットで発芽させ、発芽後2週間以内に移植する方法でもよい。大苗の移植は嫌うので、双葉の頃に移植する。
(3)成長の特長
発芽後、10cmくらいの丈で、1ヶ月~1ヶ月半ほど、ほとんど成長しない。この期間は根が張る時期であり、太い根が地下深く伸び、それに細い根が生える。この時期に水をやりすぎたり、長梅雨にあうと、根ぐされをおこす。
5月に播いた綿の木は、7月に入って気温が高くなり、日光の量が多くなると、急速に枝を伸ばし成長する。7~8月に花を咲かせ、9~10月にコットン・ボールをつける。
(4)水やり
10cmくらいの丈までの時期(5~6月頃。この間に根が成長する)あまり水をやりすぎてはいけない。土の表面が乾いたら、水を与えるようにするとよい。その後は、ほかの草木と同じように水やりを行う。
(5)摘芯(てきしん)
綿の木はほっておくと150cm程まで伸びる。(アメリカの綿畑では摘芯を行わないので、100~130cmくらいの丈のものが多い。)
日本で従来栽培していた綿は、もともとあまり大きくならず、しかも30~50cm程度におさえるよう何度も摘芯を行い、横に枝を張らせるようにしていた。これにより1本につくコットン・ボールは平均20個程度になる。鉢植えの場合は、枝を4~5本残して、1度だけ摘芯するとよい。
(6)肥料
元肥は鶏糞(窒素系肥料)がよい。しかし、畑地ならば、むしろやらない方がよい。草木灰を時々まいてやるとよい(特に若芽のころにまくと、虫をおさえることができる)。
鉢植えの場合は、元肥として肥料を少し多めにやり、本葉が出てから週一度うすめの液肥を与えるとよい。
(7)病害虫
病害としては、種が地中で腐ったり、発芽後、根ぐされなどで立ち枯れをおこしたりすることがあるが、主として低温、多湿の場合に発生する。病害の種類は数多いので、その対策もいろいろである。
綿によくつく害虫は、ハマキムシ(メイガ)がよく発生するが、低毒性の殺虫剤スミチオンが効く。ダニ類は葉の裏側につくので、市販の殺ダニ剤をまく。しかし、農薬を家庭で使用するときは慎重におこなうこと。むしろ、虫を見つけたら、その都度こまめに指で取り除いてやる方がよい。
また、ナメクジは双葉やつぼみが好物なので、ナメクジ捕殺剤をまくか、夜見回って捕殺するとよい。昼は鉢の裏に隠れていることが多いので、できるだけこまめに退治するようにする。
(8)花、実、種、繊維
綿の木は、あおい科に属し、一年生草木である。美しい花が次から次へと咲く。アメリカ綿の花は、開花第1日目はクリーム色、2日目はピンク色に変わり、しおれる。
開花後50~60日ほどで、青い実が大きくなり、やがてはじけて、白い繊維があふれ出る(これが衣料になる木綿の繊維)。しばらくして乾燥したら、つみ取る。雨にあうと繊維が垂れ下がり、汚れるので、あまり長くおかないほうがよい。
白い木綿の繊維の中に種がある。指で引っ張って、繊維と種を分ける。種には短い繊維がまとわりついているが、そのまま翌年蒔いても発芽するので、ほかの種と同じように保存すればよい。(アメリカから来た種に短い繊維が一本もついていないのは、薬品で取り去っているからで、その理由は、機械で種まきをするのに便利なようにしたためと短い繊維はキュプラと呼ぶ科学繊維や薬品の原料になるからである。)
6.寒冷地での栽培のポイント(*2)
(1)綿花は元来、熱帯ないし亜熱帯植物ですから、普通の栽培方法では、北関東各県および富山県以北あるいは山岳地で栽培される場合、かなり失敗例が多いようです。これらの地域では十分に温度が上がってから種をまけばたいていは発芽し、花は楽しめますが、完全にボールがはじけることは比較的少ないようです。
日本綿業振興会が配布している種は、米国で実際に商業栽培している実用品種ですから、おおむね北緯35度以南での栽培に適するものです。従って、日本では中部地方以南が栽培適地となりますが、関東、東北地方でも綿の栽培は決して不可能ではありません。
(2)北関東はいうに及ばず、東北地方や北海道でも、様々な工夫をこらして見事にボールを開かせた例も多くあります。最近の例では、岩手県ニ戸市、新潟県寺泊町、北海道札幌市などから成功の喜びを伝えるお便りを多数いただいております。おそらく、温度管理、日照、土質、その他の条件が非常によかったからだと思います。
(3)いろいろな努力を行って咲かせた花やコットンボールを見ることは園芸者にとっては大きな喜びです。是非あなたも下記を参考に綿づくりにトライしてみませんか。以下は寒冷地での栽培に成功した例をあげてみました。
A)寒冷地では発育期間が短いため、できるだけ早く(2月~3月)室内で蒔種し、早く発芽させてみましょう。発育期間を長くして温度を一定に保つ工夫をすることが成功への秘訣です。
・発芽するまでビニールでカバーをする。
・鉢植えで室内栽培し、夏季には鉢を屋外に出し、秋になれば再び屋内に入れる。
・ポット栽培し、後に畑へ移植する。
・フレーム栽培する。
B)陽当たりのよい場所を選ぶことが必須条件です。
C)元肥に即効肥料が必要です。
D)寒冷地では発芽するまでに多少長く月日が必要ですから、過度に水を与えると種が腐ることがあります。
7.まとめ
露地栽培の場合、特に潅水を行うこともなく、施肥も週1回程度と比較的栽培しやすい感を得た。今回、コットンボールを収穫することができたが、発展的な課題として木綿糸を紡ぎ、木綿布をつくり、生物育成が生活に密接に関わりを持つことを伝える教材として検討したい。
また、コットンボールをより多く収穫するために摘芯・摘芽を適切に行う管理技術について、栽培過程で指導することにより、「生物育成の技術」の教材として適していると言える。
引用文献
(*1)みんなの趣味の園芸;NHK出版「わた」
(*2)一般財団法人 日本綿業振興会;綿栽培日記「栽培のポイント」
投稿者:村瀬吉孝(兵庫)
投稿者プロフィール
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