「Studuino®」による自動車の衝突防止システム教材
1.はじめに
中学校技術科の「D情報の技術」において、社会や生活における問題を計測・制御のプログラミングによって解決する学習活動が規程されている。この項目では、次の二つを身に付けるよう指導することが必要である。
(1)計測・制御システムの仕組みを理解し、安全・適切なプログラムの製作、動作の確認及びデバック等ができること。
(2)問題を見出して課題を設定し、入出力されるデータの流れを元に計測・制御システムを構想して情報処理の手順を具体化するとともに、制作の過程や結果の評価、改善及び修正について考えること。
そこで、自動車の衝突防止システムに類似する計測・制御のプログラムを制御基板「Studuino®」を使って製作したので報告する。
なお、入力は超音波センサー、出力にはLEDとブザーを使用した。動作の様子は、動画にて報告する。
2.アルゴリズム
処理の手順のフローチャートを図1に示す。自動車の衝突防止システムは、走行中に前方の車両と歩行者を認識し、衝突の危険性があると判断した場合に運転者へ注意喚起する。その注意喚起は、衝突の危険性が「①ある ②高い ③非常に高い」の3段階に応じて音と光で運転者に知らせるものを想定した。
フローチャートには、超音波センサーの値の閾値を60、10の二つに設定しているが、この値は超音波センサーから送信した超音波を受信するまでの時間を距離に換算したものと思われる。したがって、対象物の平面度や材質(ぬいぐるみは、音波を透過するためかセンサーは反応しなかった)によっても変わってくるため、いくつかの値でプログラムを試行して、最適な閾値を見つけ出す必要がある。ここでは、衝突の危険性が「①ある ②高い ③非常に高い」をそれぞれ「緑>60」「60≧緑・黄>10」「10≧緑・黄・赤」の三段階に設定した。
なお、繰り返し回数は暫定的に30回(長すぎず短すぎないプログラム実行時間)としている。
3.プログラム
製作したプログラムを図2に示す。情報処理の3つの手順として、順次処理、反復処理及び分岐処理があり、サブルーチンとして関数の定義がある。このプログラムでは、基本となる3つの処理と関数を用いている。
衝突の危険性が「①ある ②高い ③非常に高い」に応じて「緑」「緑・黄」「緑・黄・赤」の三段階にLEDの発光色を設定して、ブザーの音色も三段階に設定した。発光と発音のタイミングを同じとして、そのインターバルを危険性が高くなるにつれて短くなるように設定した。
図2 プログラム
4.生活や社会との関わり
実際、自動車に用いられている衝突防止システムの概要を図3に示す。ここでは、走行中に前方の車両と歩行者を認識し、衝突の危険性があると判断した場合に運転者へ注意喚起するだけでなく、自動車のブレーキと連動させることにより、緊急ブレーキで減速させる制御も組み込まれている。これより、衝突の回避、衝突時の被害軽減に寄与・貢献しているシステムである。
図3 トヨタ自動車「トヨタの安全技術」
(出典:https://toyota.jp/safety/scene/accident/index4.html?padid=ag461_safety_about_sumaashi_link01)
今回製作した教材は、自動車の衝突防止システムに類似する計測・制御システムを想定した。生活や社会に用いられているシステムを中学校技術の授業でシミュレーションすることにより、ハードウェアとソフトウェアの関係、それぞれの役割と機能、処理の手順などを学習することができる。
更に、ハードウェアにおいて、ブレッドボードを使用しているので出力機能を追加することができる。制御基板「Studuino®」 は、LEDやブザー出力以外にモータを駆動することもできる。模型の自動車を製作して、実際の自動車の動きを模擬してみるなど発展性が期待できる。
投稿者 村瀬吉孝・兵庫県
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