電磁力でコインを飛ばそう:製作上の注意事項と実演
電磁誘導でコインを飛ばすコイン選別機はこれまでも教材として公開されていましたが,製作された森 政弘先生から,製作上の注意事項の資料と共に,実機で実演をいただく機会が得られましたので紹介します。
資料
森 政弘「電磁力でコインを飛ばそう」、ロボコンマガジンNo.11、オーム社、2000年
「コイン飛ばし」製作の配線上の注意 森 政弘
コインをよく飛ばすコツは、放電回路の電気抵抗を極力減らすことです。
商用銅の電気抵抗は、20度Cにおいて、長さ1m、断面積1平方mmで1/55Ωです。渦巻きコイルの長さはリード部分を入れて大体1mです。断面積は、直径が1mmですから、0.25π平方mmとなります。これからコイルの抵抗値を算出すると、約23mΩ(ミリオーム)となります。つまり、1000分の23Ωという非常に低い抵抗値です。
コンデンサには100Vを整流して直流をためるわけですが、コンデンサにたまる電圧は100Vではなく、100√2Vです。それは100Vというのは交流の実効値であって、コンデンサにたまるのは尖頭値ですから、その√2倍、つまり約140Vになるのです。
この140Vを23mΩで放電させるわけですから、オームの法則に従って140/0.023A≒6000Aという、とてつもない大電流が流れるわけです。したがって、途中のスイッチ(S2)が小さいものだったり、リード線が細くて、20mΩも配線の抵抗があれば、放電回路抵抗は倍になり、電流は半分、したって磁場は半分、渦電流も半分、渦電流で生じる磁場も半分、だから反発力は(半分)×(半分)=1/4に激減してしまいます。20mΩくらいの抵抗は、へたな配線をすると、簡単に生じてしまいます。
それに加えて、放電電流の変化は急峻なパルス状ですから、電線自身の電磁誘導で自分が出した磁力線が電線の外だけでなく中にも入り込み、その結果、表皮効果(Skin Effect)が現れ、電流は電線の表面しか流れないという傾向が現れるのです。したがって等価的に、さらに放電回路の抵抗は増える理です。
ですから、放電回路の配線は、できるだけ太く短く直線に、はんだ付けはしっかりと、コンデンサの端子と配線の接続もしっかりやりましょう。流れる電流は直流だという観念を捨てて、超高周波回路の配線をするつもりになるというのがコインをよく飛ばすコツです。
電解コンデンサは、そのスタンドで木台に取り付けようとすると、端子が上面に出ます。すると放電回路の配線が長くなります。これでも行けますが、筆者はアルミの台を作って、端子が下側に来るようにしました。これで20cm弱配線が短くできるからです。
ところで、面白いことを発見しました。直径1.6mmの銅線を一巻きして、直径30mmほどのリングにし、その両先端は(半田付けなどでくっつけずに、)とがらせて、極々軽く接触させておいて、渦巻きコイルの上に乗せ、瞬間大電流を流すと、火花が出ます!
巻き数1巻きのコイルから火花が出るのです!!本当に超高周波現象と同じです。
いただきました資料のダウンロードはこちらです。
「コイン飛ばし」製作の配線上の注意
なお,この実演は,毎年1月末に都内で行われている,中学校ロボコンの関係者を中心とした森政弘先生を囲む会の席上で,森先生ご自身が実機を会場に持参し,実演いただいたものです。毎回,富山県の先生方が素敵な横断幕やポスタを制作・掲示いただいております。
実演では,電源を投入し,充電。スイッチを入れると一瞬で天井までコイン(コイン代わりの金属板)が跳ね上がると共に,見守っていた先生方からも歓声が上がりました。なお,跳ね上がった金属板は天井の柱に乗ったのか,先生方で探しましたが行き方知れずになってしまいました。
2020年の囲む会時点で92歳になられた森先生ですが,ものづくりに取り組み続けられている姿や技術の面白さを後に続く方々に伝えようとされる熱意に一同感銘を受けておりました。
森先生の文部科学省でのご講演も是非ご覧ください。
投稿:村松浩幸(信州大)
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