技術のわくわく探検記 2005.6.8.|2005.8.3.|2010.6.12.|2010.6.27.|2010.7.4.|2015 1.10.   

北陸本線 糸魚川〜梶屋敷 デッドセクション
交流20kV 60Hz <-> 直流1500V

JR北陸本線 梶屋敷〜糸魚川駅〜梶屋敷駅 間  新潟県糸魚川市大和川

 直流1500Vの電化区間と交流20kV 60Hzの電化区間の接続地点では、電車・電気機関車は、架線に給電されていないデッドセクションの直前で電動機への通電が切られ、デッドセクションの区間を惰行状態で通過していきます。デッドセクションの区間で、運転士・機関士は電気回路の車上切換を行い、送電区間に入ったところで電動機への通電を行います。
 デッドセクションを通過中は、列車は停電状態になるため、車内灯や前照灯の一部が消灯する車両もあります。新しい車両はバッテリーを搭載しており、車内灯は消灯しません。ただし、大きな電力を必要とする空調機器は一時的に停止します。


特急「北越8号」(新潟〜金沢)T18編成 485系 交流直流両用特急形電車
2010年6月27日 撮影

デッドセクションを通過中に前照灯の一部が消灯しています。

「直流」「無給電」「交流」の給電を示す表示が電柱に取り付けてあります。

直流区間を示す表示 架線が無給電区間を示す標識 交流区間を示す表示


惰行標 力行標



デッドセクション(無給電区間)を通過中の電車
前照灯の片方が消灯しています。
2010年6月 撮影

北陸本線 デッドセクション(交直切換 糸魚川-梶屋敷) 普通(413系) 糸魚川1333-直江津1412
2015年1月10日 撮影


糸魚川駅に到着した413系 交流直流両用近郊形電車

YouTube (technology education)->北陸本線 普通(413系)糸魚川〜梶屋敷 デッドセクション
交流60Hz 20kV→直流1500V
糸魚川13時33分発 2015年1月10日 撮影


出発時間などを確認しています。


「出発進行」と指差確認しています。
「出発進行」は「出発信号」が「進行表示」になったということです(^^)


交直切換」区間が赤のラインで表示されています。
着発時刻は秒単位、速度などが示されています。


「交直切換」を行うデッドセクション(無給電区間)に接近したことを示しています。


一番左側に少し見えている速度計は約90km/hを示しています。


「まもなく交直切換」の表示が出ました。


電車運転士が、架線からの給電を遮断したため、一番右側の電圧計が0Vになりました。
一番左側に少し見えている速度計は約90km/hを示しています。
約90km/hで惰行運転しています。


デッドセクション(無給電区間)を通過中です。
「全切確認」で架線からの給電を遮断したことの確認をする表示が出ています。


デッドセクションを通過して直流区間に入ったため
電圧計が直流1.5kV(1500V)になりました。


梶屋敷駅に到着
停止位置を確認するため「3両」編成の表示が出ています。


何も知らなければ、通り過ぎてしまう区間ですが、電気技術の視点で見ていくと、なかなか複雑なしくみがあるのです(^^)

 この区間は、北陸新幹線 長野〜金沢 の開通によってJRから分離され、第三セクター「えちごトキめき鉄道 日本海ひすいライン」となります。糸魚川〜梶屋敷 間にデッドセクションがあるため、この区間に電車を走行させるためには、交直両用電車を使わなくてはなりません。交直両用電車は小規模の変電所を搭載していることと同じであるため、車両が高価であり、電車は最も短い編成でも2両編成となり、1両単独での運用が出来ないことなどを考慮すると、コスト高になります。そのため「えちごトキめき鉄道」は、電車ではなく、気動車(ディーゼル車)を新製して導入することにしました。
 北陸本線は日本海側の輸送の大動脈であるために、貨物輸送はJR貨物が第三セクターから路線を借りるかたちで貨物列車を運転していきます。日本海側は、交流60Hz直流、そして東北地方に入ると交流50Hzの電化区間となるため、3種類の電源に対応できる交直両用電気機関車「EF81」「EF510」などが、この区間を駆け抜けていくことは今後も継続していきます。

北陸本線 糸魚川〜梶屋敷 間のデッドセクションを駆け抜けていく
寝台特急トワイライトエクスプレス」(大阪〜札幌)
客車を牽引しているのは交直両用電気機関車「EF81」
運転区間が日本最長の「トワイライトエクスプレス」は、2015年3月に廃止となります。

2010年7月4日 撮影


 国鉄当時は、電気機関車は直流用交流直流両用交流用で車体の色分けがされていました。JRになってからは、この塗色の制約がなくなったので、さまざまな色が自由に塗られるようになっています。(さらに交流用には50Hz用と60Hz用に分かれています。)

直流用電気機関車 交流直流両用 交流
青(青15号 濃青色) ローズピンク(赤13号) 赤(赤2号)
EF66 EF81 ED76

関連して・・・

デッドセクションは、直流電化された路線と、交流電化された路線の接続地点などに設置されるため、日本全国にいくつかありますが、ちょっと変わった事情で交流電化されたために設置されたものもあります。たとえば・・・
・JR常磐線のデッドセクション(常磐線 取手〜藤代 間の交直セクション)
   「気象庁 地磁気観測所」(茨城県石岡市柿岡595)で地磁気の精密な測定に影響を与えないために、直流ではなく交流電化されました。
  「つくばエクスプレス」(首都圏新都市鉄道)守谷〜みらい平 間の交直セクション、関東鉄道 常総線の非電化も同じ理由です。


日本の商用電源周波数に50Hzと60Hzがある理由

 日本は明治時代に東京電灯(東京電力の前身)がドイツから交流50Hzの発電機を輸入し、大阪電灯(関西電力の前身)がアメリカ合衆国から交流60Hzの発電機を輸入して、電力を供給しはじめたことが原因で、現在の商用電源周波数は、西日本が60Hz、東日本が50Hzになっています。 

 そのため、電力会社間で電力を融通できるようにするために「周波数変換所」が設置されています。
周波数変換所 日本に3か所ある周波数変換施設・・・東日本の交流50Hzと西日本の交流60Hzを相互に変換


このことをふまえて、新幹線の電化方式を考えるとおもしろいです。(電気の学習で取り上げています(^^))
新幹線は交流25kV(25000V)ですが、周波数がそれぞれ異なります。
・東海道新幹線 交流60Hz 25kV(東京〜静岡は商用電源周波数50Hzを新幹線沿線の4か所(大井FC、綱島FC、西相模FC、沼津FC)の周波数変換変電所(FC)で60Hzに変換して給電しています。)
 山陽新幹線 交流60Hz 25kV
 東北新幹線 交流50Hz 25kV
 上越新幹線 交流50Hz 25kV
 九州新幹線 交流60Hz 25kV
 北海道新幹線 交流50Hz 25kV
 北陸(長野)新幹線 交流 25kV 東京〜軽井沢 50Hz、軽井沢〜(長野)〜飯山 60Hz、飯山〜(上越)〜糸魚川 50Hz、糸魚川〜(富山)〜金沢 60Hz
 ※周波数の区間は各駅間ではありません。(たとえば長野新幹線では軽井沢〜佐久平 間で周波数が変わります。
なぜ東海道新幹線は60Hzに統一されているのに、北陸(長野)新幹線は50Hzと60Hzが混在しているの?・・・

そのほか、ちょっと余談になりますが、生徒に次のような質問を出して考えさせています。

・なぜ山陽新幹線や東北新幹線は時速300km前後なのに、北陸(長野)新幹線は最高時速が260km・・・(^^)
・なぜ東北新幹線は盛岡から新青森では時速260km以下に減速するの・・・
・なぜ北陸(長野)新幹線E7系の客室内では全席に自由に使用できるコンセント(outlet)が付いているのに、東北新幹線E5系「はやぶさ」の客室内では窓側席と車端の座席のみにしかコンセント(outlet)がないの・・・
北陸(長野)新幹線E7系の客室内では全席に自由に使用できるコンセント(outlet)が付いています。交流100V 60Hzです。なぜでしょう?
・東海道・山陽・九州新幹線はつながっているのに、東京駅〜鹿児島中央駅 の直通列車が無いのはなぜ?
・東海道新幹線と東北・上越・北陸(長野)新幹線は東京駅に乗り入れているのに、なぜつながっていないの(直通列車がない)?

在来線では、
・なぜ鉄道の電化方式に直流と交流(50Hz/60Hz)があるの?
・直流は1500Vなのに、交流は20000V(20kV)なの?

どうでもいいことかも知れないけれど、知っているとなんだか楽しいですね!
私たちの知らないところで、電気技術者の皆さんは、いろいろ考えているのですね!!
電気の技術は、いろいろ工夫されて、わたしたちの社会や生活の中で利用されているのだなあ〜(^^)



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こんなところにも周波数による色分けが・・・

 現在では長野新幹線(北陸新幹線)の「あさま」は、E7系に移行されていますが、かつては「あさま」と東北新幹線「はやて」に使われていたE2系は外形は同じですが東北新幹線(上越新幹線)の交流50Hz用長野新幹線50Hz・60Hz両用で塗色が異なっていたのを知っていましたか?(^^)

左の赤いラインの車両が長野新幹線50Hz・60Hz両用
右のピンクの車両が東北新幹線(上越新幹線)の交流50Hz用
北陸(長野)新幹線E2系
50Hz・60Hz両用
東北・上越新幹線E2系
50Hz用

北陸本線 敦賀〜北陸トンネル デッドセクション(直流1500V <-> 交流20kV 60Hz)

仙山線 作並駅 交流電化発祥地

・JR東日本 新軽井沢き(饋)電区分所 日本で最初の交流50Hzと60Hzの異周波切替セクション


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