産業技術遺産探訪 2005.9.24./10.22.

達曽部川橋梁

(JR釜石線・達曽部川橋梁)

1943(昭和18)年竣工(岩手軽便鉄道・達曽部川橋梁を改修)
鉄筋コンクリート造・カテナリーアーチ橋(6連アーチ橋)
長さ98.5m、高さ17m(川面から)
土木学会選奨土木遺産

岩手県遠野市宮守町下宮守
(岩手県上閉伊郡宮守村字下宮守)


土木学会選奨土木遺産

 1915(大正4)年11月に竣工した岩手軽便鉄道の「達曽部川橋梁」の橋脚を包み込んで
作られたため、現在の橋脚は開口部が左右に分かれています。

            

岩根橋・・・
この橋は正式には達曽部川橋梁といい、旧岩手軽便鉄道の鋼板桁橋、橋台、橋脚をそのまま鉄筋コンクリート、
カテナリーアーチとして中に包み込んだもので、昭和18年に改修され、平成14年には、土木学会選奨土木遺産
に認定されています。
宮守村には、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」のモチーフになったといわれる、有名な「めがね橋
(正式には宮守川橋梁)」がありますが、実はこの岩根橋がモチーフとされた、ともいわれています。

旧・岩手軽便鉄道 達曽部川橋梁は、宮沢賢治の作品「そのとき嫁いだ妹に云ふ」(春と修羅 第二集 五〇六)にも登場します。
「・・・ほのかにしろい並列は 達曾部川の鉄橋の脚・・・」

 20世紀のはじめに石灰岩を原料とする「石灰窒素法」(空気中の窒素を工業的に固定する化学的方法)が発明・実用化されました。これによってカーバイトから肥料用石灰窒素やアセチレンガスを工業的に生産することが可能となりました。
 現在の宮守村岩根橋周辺では、1918(大正7)年に水力発電所(岩根橋第1発電所)が建設され、その電力と、北上山地の豊富な石灰岩を原料とするカーバイトの生産を行う工場が操業をはじめました。
 宮沢賢治の盛岡高等農林学校農学科第二部(農芸化学)卒業(得業)論文「腐植質中ノ無機成分ノ植物二対スル価値」や、羅須地人協会での2000枚を超す肥料設計書、東北砕石工場での技師として肥料用石灰(炭酸カルシウム)の調整や販売など、貧困に苦しむ当時の農民の救済を心から願う宮沢賢治にとって、カーバイト工場や水力発電所に関心を示していたことは、その作品から読み取ることが出来ます。
 宮沢賢治が「銀河の発電所」と呼んだ水力発電所(岩根橋第1発電所)は「春と修羅 第二集 五〇八 発電所」、カーバイト工場は「まちなみのなつかしい灯とおもつて いそいでわたくしは雪と蛇紋岩との 山峡をでてきましたのに これはカーバイト倉庫の軒 すきとほつて冷たい電燈です・・・」(春と修羅 カーバイト工場)に登場します。


達曽部川橋梁付近の線路の柵には、銀河鉄道がデザインされています。


宮守川橋梁(JR釜石線・宮守川橋梁  岩手県遠野市宮守町下宮守30地割〜31地割
          1943(昭和18)年竣工 鉄筋コンクリート造・バランストアーチ橋(5連アーチ橋) 土木学会選奨土木遺産

旧 岩手軽便鉄道 宮守隧道・鱒沢隧道 1915(大正4)年竣工 煉瓦造 岩手県遠野市宮守町(岩手県上閉伊郡宮守村)


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