産業技術遺産探訪 2001.6.29.

白石工業(株)
碓氷第1工場・水力発電施設

群馬県碓氷郡松井田町原25番地

   

 白石工業・碓氷第1工場は、1961(昭和36)年に操業を開始しましたが、それ以前に、白石工業・白艶華工場の分工場として1956(昭和31)年から稼働していた工場です。当時は、塗料や印刷用インキの濃稠化材として開発された「オルベン」の専門工場でした。「オルベン」の原料となる「ベントナイト」が周辺地域で産出するために、ここに工場が設置されたわけです。工場内にもベントナイトを採掘するための坑道入口跡が残っています。

 ※白石工業の「オルベン」製品には、「オルベン」「オルベンA」「オルベンP」があり、「オルベン」は、コロイド性含水珪酸アルミニウムの有機複合体で、塗料、接着剤、印刷インキ、潤滑グリースなどの流動性を改善するために使用されています。「オルベンA」は耐熱性に優れている製品です。「オルベンP」は、オルベンを可塑性DOPに分散させ、溶媒和させた固形分15%のグリース状オルベン・ゲルで、プラスチックやビニール塗料などに使用されています。


 白石工業の工場レイアウトには1つの共通点があります。創業者の白石恒二は、工場の設計に際して、いかにすれば人力の無駄をなくし、大量生産ができ、コストが安くなるか、といった問題を中心に検討しました。その結果、自然の重力を利用して、原料と動力を自給する生産方式を考案しました。傾斜地に工場を立地することによって、水流の落差を水力発電と粉砕機の動力に利用し、山肌の傾斜を階段状に利用して、石灰石の焼成、化合、水簸、乾燥、粉砕、出荷までの工程を一貫して行うことができるようにしたものでした。一見すると水力発電所の構造に似ているこの工場レイアウトは、白石恒二が電気技師でもあったためと言われています。


水圧鉄管

 この水力発電所の水圧鉄管があった付近は、明治時代に西毛電気(株)川久保発電所の水圧鉄管と発電所を建設した場所に隣接しています。どちらも霧積川から取水していました。

水圧鉄管を流下してきた水は、3分割されて、1つはフランシス水車へ、その他の2つはペルトン水車へ導かれています。


1955(昭和30)年の刻印がある水圧鉄管のバルブ


貯水槽

この貯水槽に溜まる落ち葉などが水圧鉄管の入口付近で詰まることが多く、水力発電に大きく影響を与えたと言われています。


この建物の半地下に発電施設があります


フランシス水車(電業社水車製造所製)


電業社水車製造所

自動油圧式調速機(ガバナー)


遠心調速機になっています。


「タコメーター」と「圧力計」


自動油圧式調速機
電業社水車製造所


ペルトン水車

ペルトン水車のノズル
ペルトン水車は2基設置されています。


直流発電機(東京芝浦電気製)


ペルトン水車の駆動力はベルトによって伝達され、工場の動力に使われていました。


事務所棟


昭和30年代の雰囲気を今に伝える事務所棟


現在では、原料のベントナイトはアメリカからの輸入品を使っています。


 工場の見学では、白石工業株式会社白艶華工場・課長の新井さん、碓氷第1工場・製造課主任の荒木さんにお世話になりました。


白石工業(株)白艶華工場・炭酸カルシウム乾燥小屋
(群馬県甘楽郡下仁田町青倉1177番地)


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