産業技術遺産探訪 2007.1.5.

星尾風穴
大上風穴

蚕種貯蔵所

1905(明治38)年1月竣工

群馬県甘楽郡南牧村星尾 

 星尾風穴(大上風穴)は、地下から吹き出す冷風を利用した蚕種の貯蔵施設(1905(明治38)年1月創業)で、蚕の種紙を保管する貯蔵所として各地から委託を受けていました。この風穴は、地中に穴を掘り、内部を石垣で囲んで屋根は地上の高さに設置されていました。 

星尾風穴
創業 1905(明治38)年1月
資本金 1500円(当時) 合資会社
経営者 大河原茂平・市川竹十郎・今井邦平
責任者 岩井亀太郎・治田鍋十郎・掛川佐一郎・高橋参之助・松平銀太郎
技手 土屋泰
規模 貯蔵庫建物 間口2間(約3.6m) 奥行3間(約5.5m) 高さ1丈(10尺)(約3m)
    貯蔵所管理小屋 間口6間半(約11.8m) 奥行2間(約3.6m)
    蚕種2万枚貯蔵
    貯蔵庫温度 最低 華氏24度(摂氏−4.4度) 最高 華氏45〜46度(摂氏7.2〜7.8度)
            蚕種の出穴終了時期(7月30日) 華氏42度(摂氏5.6度)
 大河原茂平と市川竹十郎は蚕種貯蔵施設として星尾風穴を使うことができるか調べるために、1904(明治37)年6月から風穴の温度を測定し記録を始めました。蚕種貯蔵が可能であることがわかると、東京蚕業講習所の技手であった土屋泰の指導を受けって設計を行い、1904(明治37)年10月に貯蔵施設を起工し、1905(明治38)年1月から蚕種貯蔵所を合資会社組織として創業し営業を開始しました。
 群馬県の旧 北甘楽郡内には、蚕種貯蔵施設としてこの「星尾風穴」の他に「荒船風穴」がありました。
 昭和に入って蚕種の貯蔵所としての役目を終えたあとは、地元の青年団が経営する天然氷の貯蔵所として使われていました。
この石垣の上に貯蔵所管理小屋がありました。 貯蔵庫(風穴)入り口の左側に
貯蔵所管理小屋が設置されていました。
              

参考資料

矢島太八「甘楽産業叢談 富岡地方郷土史料」木田書店 1909(明治42)年
復刊・・・矢島太八「甘楽産業叢談 富岡地方郷土史料」「甘楽史観 郷土の花影」国書刊行会 1988(昭和63)年


群馬県内のおもな蚕種貯蔵用風穴跡

栃窪風穴
(群馬県吾妻郡中之条町栃窪)

荒船風穴
(群馬県甘楽郡下仁田町大字南野牧屋敷)

星尾風穴
(群馬県甘楽郡南牧村大字星尾)

黒岩風穴
(群馬県高崎市箕郷町松之沢)

榛名風穴
(群馬県渋川市伊香保町伊香保)


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