産業技術遺産探訪 2002.11.5./2006.8.1.

東京電力(旧 東京電灯)
八ツ沢発電所一号水路橋
(猿橋水路橋)

1912(明治45)年竣工 設計:神原信一郎
鉄筋コンクリート造 長さ:63.63m 幅:5.45m
水路坑口は煉瓦造

国登録有形文化財

山梨県大月市猿橋町猿橋

 日本で最初の水力発電所は、京都・蹴上の琵琶湖疎水を利用した「蹴上発電所」(明治24年竣工)でした。東京では当時の増加する電力需要をまかなうため東京電灯によって火力発電所が増設されていきましたが、日露戦争などの影響による産業政策で石炭が慢性的に不足していました。そのため東京電灯は、水力発電による東京への長距離送電を計画しました。水利調査などを経て山梨県大月に「駒橋発電所」をつくるため、明治39年1月に着工、明治42年12月20日に竣工し東京(早稲田の変電所)へ初めて水力発電による長距離送電(76kmで当時は日本最長)を開始しました。

 さらに「駒橋発電所」に続いて、1912(明治45)年に、山梨県北都留郡上野原町八ツ沢に東京電灯「八ツ沢発電所」が計画されます。このとき「駒橋発電所」で水力発電に使った水と、桂川の左岸にある支流の水を合流させて利用するために、大月にある名勝「猿橋」のすぐ東側に桂川の上を横断する「八ツ沢発電所一号水路橋」が架けられました。

 八ツ沢発電所の水路橋は、この「一号水路橋」(国登録有形文化財)のほかにも「二号水路橋」、「三号水路橋」(国登録有形文化財)、「四号水路橋」があり、いずれも煉瓦造で現在も使われています。

 鉄筋コンクリートは明治36年に日本へはじめて導入されるようになったもので、「八ツ沢発電所一号水路橋」は、この鉄筋コンクリートが持つ素材の特性を生かした当時としても非常に斬新なデザインで、景観を配慮した設計が行われていたと考えられます。 


鉄筋コンクリート造 長さ:63.63m 幅:5.45m


三号隧道(水路坑口の呑口側)煉瓦・石造


文化庁による登録有形文化財を示すプレート
(現在は取り外されています。)

 この「八ツ沢発電所一号水路橋」は現在も東京電力によって使われています。桂川に沿って現在は8か所の水力発電所が稼働していますが、これらの発電所では水力発電に使った水を水路で下流の発電所へと導き次々と利用するといった形式になっています。


八ツ沢発電所 一号水路橋国登録有形文化財) 二号水路橋 三号水路橋国登録有形文化財) 四号水路橋


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