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2012年

蚕(カイコ)

 カイコの飼育は2000年に初めて行い、2006年から毎年続けて行っていますが、今回は2008年以後、久しぶりにたくさんの蚕(約2400頭 絹織物1反に必要な繭は約2600粒)を飼育します。中学校 技術科での学習「生物育成の技術」と「産業技術史」の教材としても使います。

 私が現在勤務している中学校は、かつては養蚕が盛んに行われていた地域で、組合製糸「碓氷社 本社」があったところです。学校から「旧 碓氷社 本社事務所」(1905(明治38)年竣工 群馬県重要文化財)が見えるところにあります。また、周辺には、養蚕農家が経営する全国唯一の製糸工場である「碓氷製糸農業協同組合」の製糸工場、「上州座繰(ざぐ)り」で生糸を引く工房「蚕絲館」などがあり、かつては県立蚕糸高校があった地域です。
 この地域に暮らしている子どもたちに、そうした産業やその歴史にも目を向けて欲しいと思います。


学校から見えるところに「旧 碓氷社 本社事務所」があります。


学習のための参考資料    

木内信・本くに子「そだててあそぼう 19 カイコの絵本」農山漁村文化協会 1999年 1890円(税込) ISBN4-540-98148-X C8745
農業生物資源研究所「カイコってすごい虫!」平成22年3月 改訂版発行(PDF 1.9MB)
・全国養蚕産地育成推進協議会「よくわかる蚕(かいこ) 養蚕技術普及資料」
・「カイコの飼育体験教室 飼育マニュアル」群馬県立日本絹の里
・小笠原英明「カイコの学習と飼育」(グリーンブックス 9)ニュー・サイエンス社 1979年

ぐんま絹遺産(群馬県 : ぐんま絹遺産ネットワーク活用実行委員会)
ぐんま絹遺産MAP(群馬県 : ぐんま絹遺産ネットワーク活用実行委員会)

・鈴木 芳行「蚕にみる明治維新 渋沢栄一と養蚕教師」吉川弘文館 2011年
・橋本 由子「上州島村シルクロード 蚕種づくりの人びと (ジュニア・ノンフィクション) 」 銀の鈴社 2009年
・「群馬の養蚕」(みやま文庫 86)みやま文庫 1983年
・嶋田透(教授 生産・環境生物学専攻)「外山亀太郎が興したカイコの遺伝学の今日的意義」東京大学農学部公開セミナー 第33回 農学を創った人、農学が創ったもの



毛羽(けば)を取り除く前の状態です。毛羽のふわっとした感じがきれいです。


繭から取り除いた毛羽を集めたものです。
ふわふわっとして、まるで「綿(わた)」のようです・・・実は「綿」というのは、本来はこの繭からつくったものを指します。
ですから植物からつくった綿は「木綿(もめん)」と言い、繭からつくったものは「真綿(まわた)」と言います。
実際には、真綿は繭をお湯に浸して、シート状に引き伸ばしてつくっていきます。
「真綿色したシクラメンほど〜」っていう歌もありますね。この曲、中学生知ってるかな?(^^)


7月30日〜31日 「収繭(しゅうけん)」

 今回の養蚕(カイコの飼育)は、昨年飼育した雑種強勢を利用したF1世代(First filial generation:雑種第一世代)が産卵したF2世代です。そのため、発育の揃いが良くなかったり、しっかりとした繭を作らない割合が増えます。さらに、桑の供給量と、気温の影響で、計画よりも遅れたり、成長の進み具合も差が出ました。単純に蚕を飼育するというだけなら問題にはならないのですが、繭の生産という観点で見ると、養蚕の難しさが実感としてわかってきます。

 このあと、繭を乾燥(「殺蛹(さつよう)」)して糸(生糸)をとるものと、羽化させて産卵させるものに分けます。


白い繭をつくる蚕のほかに、黄色い繭をつくる蚕を飼育してきました。


35日目

7月26日

早い時期(7月19日まで)に繭になった蚕が蚕蛾となって羽化してきました

繭を、分泌する液体で溶かして出てきます。(早朝に羽化することが多いと思います。)蚕蛾(カイコガ)は、なかなかカッコイイですよ。
羽はあるのですが、飛ぶことはできません。また何も食べません。
雌(メス)のフェロモンの影響が無いときには、おとなしくしています。


29日目

7月20日

営繭が始まっています。収繭量がどのくらいになるか・・・


28日目

7月19日

 1学期の技術科の学習も今日で終わります。
 蚕への給桑(きゅうそう)もそろそろ終了です。熟蚕(じゅくさん)が見られるようになったため、50頭ずつ分けて「まぶし(蔟)」を設置していきました。もう繭をつくってしまった蚕もいます。今日から明日にかけて、営繭(えいけん)がはじまると思います。

 このあと2学期に、養蚕の技術や製糸技術、産業としての養蚕・製糸・織物の歴史について学習していく予定です。


27日目

7月18日

 「上蔟(じょうぞく)」の準備として、「まぶし(蔟)」が必要になります。回転蔟があったはずなのですが、学校を異動するための引っ越しで、見あたらなくなってしまいました。(回転蔟の枠は見つかったのですが・・・) そこで、「まぶし(蔟)」をつくることにしました。収繭(しゅうけん)の効率化のために発明された回転蔟までの歴史などを学習してから、「まぶし(蔟)」を生徒たちにつくってもらいました。今回は、製図の学習のための立体模型を製作するときに使っている工作用紙を使って、40mm×40mmの区画ができるようにしました。30分で49頭分(7×7)が「営繭(えいけん)」できる「まぶし(蔟)」を3つも作ってしまう生徒もいました。

今日も昼休みに「虫愛づる姫君?」たちがやってきて、「見て見て、おもしろい」「かわいいなぁ」と、しきりに繰り返していました。
食欲が旺盛な「草食系○○」(^^)に驚いていました。桑の葉をどんどん食べていきます。体長2mmの毛蚕(けご)が、6cmにまで大きくなりました。


25日目

7月16日


22日目

7月13日 「虫めづる姫君」? 現る!・・・以前に「エンジン少年」現る!を紹介しましたが、今回は「虫めづる姫君」?です。

 蚕を自分でも飼育したいと、箱を用意してくる生徒がいます。
そうした生徒たちには、蚕について授業で学習することよりも少し詳しい資料や、今後の飼育に必要なことについて知らせています。

 休み時間に蚕を見に来る生徒たちもいます。
桑を食べる様子を観察したり、蚕を手に乗せて興味深そうに見ています。

 友だちと一緒に技術室にやってきて、「かわいいなぁ」と言っている姿を見ていたら、
「虫めづる姫君」(堤中納言物語)を思い出しました。
ちょっとWebで調べてみたら、現代語訳でおもしろいものを見つけました。読みながら思わず笑ってしまったり、なるほど・・・と思ったり、楽しくなりました。

虫めづる姫君(現代語訳) http://www1.plala.or.jp/yossie/words/020501.htm

堤中納言物語(現代語訳) http://www.h4.dion.ne.jp/~kirasyui/tutumi/tutumitop.html

蚕と絹の話も出てきて、びっくりしました。

「きぬとて、人々の着るも、蚕のまだ羽つかぬにし出だし、蝶になりぬれば、いともそでにて、あだになりぬるをや」とのたまふに、言ひ返すべうもあらず、あさまし。

 生徒に「虫めづる姫君」の話をしたら、宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」は、この姫君がヒントになっているんだっていうことを教えてもらいました。
材料の「鉄(鐵)」について学習するときに、「たたら製鉄」に関連して「もののけ姫」を、それから設計・製図の学習では「紅の豚」を話題にしたりするのですが、これからは「風の谷のナウシカ」も・・・(^^)


21日目

7月12日

飼育する箱も9個に増やしました。


桑の葉を切ると、切り口から乳液が出てきます。 

 「古代からカイコの餌として用いられてきたクワの葉が実際はカイコ以外の昆虫に対して強い毒性と耐虫性をもち、それがクワの葉を傷つけたとき葉脈からしみ出てくる白い乳液に含まれる成分に起因していることを解明しました。・・・クワが乳液成分で昆虫による食害から身を守る一方、カイコがクワの防御機構に巧妙に適応したことを示しており、数千年にわたる養蚕の歴史の中で気付かれなかったクワとカイコの密接な関係の本質に迫る成果です。」(「クワは乳液で昆虫から身を守る- 植物の乳液に農薬・医薬の宝庫としての可能性 -」独立行政法人 農業生物資源研究所・独立行政法人 食品総合研究所)


 蚕を飼育するために、「ミナミサカリ」、「ポップベリー」、「ララベリー」という品種の桑を栽培しています。ポップベリー(実が多産性の桑)やララベリー(実が豊産性の桑)は、農業生物資源研究所で品種改良された桑で、おいしい桑の実が食べられます(^^)

 人の興味関心というのは不思議なもので、蚕を飼育しようと考えていると、技術室(学校での私の仕事場!)の前にある中庭に、桑の木があるのに気が付きました。(2012年7月6日) これで桑の葉の安定供給ができそうです。

今回、発見!?した桑の木 校舎の屋上にも桑の木が生えている・・・
この学校に赴任してきた時から気になっていました(^^)

 以前、小学校で子どもたちと蚕を飼育して、地域の産業遺産について学習していた(2006年から2008年)様子が、新聞記事に掲載されました。その記事を見た、かつての養蚕農家の方から、「使わなくなった養蚕の道具をどうぞ」と、「回転まぶし」や「蚕棚」など、いろいろなものをいただきました。そのうちの1つ、桑のかごです。梅雨の時期、収穫した雨でぬれた桑の葉を、蚕に与える前に乾燥させるために使っています。養蚕農家になったみたいで、リアリティがあっていいなあ(^^)

     みんなで桑を截りながら
                   宮澤賢治
   みんなで桑を截りながら
   こもごもに見る向ふの雲
   そのどんよりと黒いもの
   温んだ水の懸垂体
   それこそ豊かな家とも見え
   またたべものにもなりさうな
   温く豊かな春の雲だ

19日目

7月10日


18日目

7月9日

飼育するための容器(段ボール箱)をさらに4つに分けました。


17日目

7月8日

桑の葉を食べるのをやめ、頭を上げてじっとしています。「眠(みん)」に入りました。このあと脱皮がはじまります。・・・
   ・・・と思ったら、休んでいるだけだったようです(^^;) しばらくすると、また桑の葉を食べ始めました。

7月7日〜8日(旧暦5月21日〜22日)、松尾芭蕉(「奥の細道」)は、山形の尾花沢を訪れています。ここで、江戸で知り合った紅花問屋の清風(鈴木清風、島田屋八右衛門)に、紅花と並んで特産物であった養蚕の様子を見せてもらいました。

這(は)ひ出でよ飼屋(かいや)が下の蟾(ひき)の声    芭蕉

   そんなところで鳴いていないで、はい出して来なさいよ。蚕部屋(カイコを飼育する部屋)の床下で鳴いているヒキガエルさん。

同行した曾良は、カイコを飼う人たちの、素朴で質素な服装の様子を詠んでいます。

蚕飼(こが)ひする人は古代の姿かな  曾良           


15日目

7月6日

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桑の葉を食べていくときに、
ザワザワ音がきこえてくるようになりました。

飼育するための容器(段ボール箱)を2つに分けました。


7月3日


11日目

7月2日 人工飼料が終わったので、今日から桑の葉を与えます。一度、桑の葉を与えた蚕は、もう人工飼料を与えても食べなくなります。

いったい何頭(カイコは家畜であるため、匹ではなく頭で数えます)いるのでしょうか(^^)・・・「技術科@スクール」稚蚕飼育所です!
これだけたくさんいても、あちこちへ行ってしまわないのは、不思議です。人間と蚕の長い歴史を感じさせてくれます。


カイコはまだ小さいので、取り扱いは筆で行います。


10日目

7月1日


8日目

6月29日


5日目

6月26日


3日目

6月24日


2日目  掃立て(はきたて)

6月23日 はじめは人工飼料を与えて飼育しています。カイコはまだ小さいので、取り扱いは筆で行います。


1日目

6月20日から孵化がはじまり、6月21日から6月22日にかけてたくさんの蚕(毛蚕:けご)が卵から孵化してきました。
冷蔵庫から出庫後、約12日経過して孵化したことになります。


6月9日 カイコの卵(蚕種)を冷蔵庫から出して常温で孵化を促します。

昨年(2011年)飼育した蚕蛾が産卵したものを8月14日に冷蔵庫に入れて保管してきました。


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