産業技術遺産探訪 2003.12.23./2011.8.7.

きったてばし
切立橋

経済産業省近代化産業遺産
会津若松市「歴史的景観指定建造物」
会津若松市「美しい会津若松景観賞受賞建造物」

福島県会津若松市河東町岡田〜福島県喜多方市塩川町金橋 日橋川
(旧) 福島県河沼郡河東町〜耶麻郡塩川町

架設年について1925(大正14)年5〜6月頃であるという指摘がありました。(2020年10月28日 追記)

 この橋は1921(大正10)年、「東京電灯株式會社(現在の東京電力株式会社)猪苗代第四発電所」の建設時に資材輸送用軌道を布設(磐越西線・広田駅から猪苗代第四発電所の区間)した際に日橋川(にっぱしがわ)に架橋されたものです。
 もともと、この橋梁は1890(明治23)年に当時の橋梁技術の分野では先進国であったドイツで製作され、1891(明治24)年に「九州鉄道(現在のJR九州)鹿児島本線・船小屋駅〜瀬高駅間」の矢部川(福島県筑後市大字津島〜福岡県山門郡瀬高町大字長田)に架橋されていたものですが、大正時代になって列車重量が増加したためにプレハブ橋梁では耐荷重不足となり、荷重に耐えられる新しい橋梁に架け替えられた際に取り外された橋梁です。
 会津地方の電源開発が進む中で、当時、「猪苗代水力電気株式會社」(東京電灯株式會社の前身)の社長であった仙石貢(1857−1931)は、かつて「九州鉄道」の社長であり、この橋梁も九州から福島県の会津に運ばれて転用(1921(大正10)年)されることになりました。猪苗代第四発電所の建設中は資材運搬用の鉄道橋梁として使われていましたが、発電所が完成した後は発電所の保守・点検用の道路橋となり、現在では一般道の橋梁として通常の維持管理(東京電力株式会社猪苗代電力所の水力発電設備修繕費)で使用されながら保存されています。
 当時、この型式のプレハブ橋梁はドイツから日本に11橋輸入されましたが、現存する橋梁は、この「切立橋」を含めてわずか2橋となり、歴史的建造物として大変貴重な産業技術遺産です。

製作 ハーコート社(ドイツ)
長さ 49.00m
型式 ボーストリング・トラス橋
特徴 構造部材をピンとボルトで連結し組み立てるプレハブ橋。ドイツのハーコート社が発展途上国や植民地向けの橋梁として製造・輸出していた橋梁。
所有者 東京電力株式会社(猪苗代電力所)



2011年8月7日 撮影

 切立橋

 切立橋は、明治23年(1890年)にドイツで製造され、九州鉄道(現在のJR九州)鹿児島本線の矢部川(福岡県)に架けられていたが、鉄道橋としての現役引退に伴い、大正10年にこの地に架設されたという歴史を持つ。
 当初は、猪苗代第四発電所の建設資材運搬用として利用されるなど、電力黎明期における水力電源開発の歴史を支える存在となった。現在では、近代化産業遺産としても非常に貴重な橋である。
きったてばし
切立橋

 この橋は大正10年(1921年)東京電灯(株)(現東京電力)猪苗代第四発電所建設時に資材輸送用軌道を敷設(磐越西線広田駅〜発電所間)した際に日橋川に架橋されたものです。

 そもそもこの橋は、明治23年(1890年に)橋梁技術の先進国であるドイツで製作され翌年に九州鉄道(現JR九州)鹿児島本線の矢部川(福岡県)に架橋されていたものですが、大正時代に入り列車荷重の増加に伴い引退しました。
その後、電力需要が活発になり会津地方の電源開発がどんどん進められました。当時猪苗代水力電気(株)(東京電灯の前身)の社長をしておりました仙石 貢 氏が、かつて九州鉄道の社長でもあったという縁ではるばる会津の地で転活用されたものです。
当時このプレハブ橋はドイツから日本に11橋輸入されましたが、現存する橋は本橋を含めて僅か2橋となり、歴史的遺産としても大変貴重なものです。

制(製)作:ドイツ「ハーコート社」
長さ:49.00メートル
種類:ボーストリングトラス橋
特徴:部材をぼるとで連結組立するプレハブ橋

東京電力
猪苗代電力所


橋梁下部


東京電力・猪苗代第四発電所」に隣接して架橋されています。


鉄道局技師当時の仙石貢(1857−1931)は、信越本線・碓氷峠のアプト式鉄道建設にもかかわりがあります。

「・・・明治17(1884)年3月から測量技師南清、小川資源によって進められていた横川−軽井沢間の調査により、いくつかの鉄道建設ルートが検討されました。25〜100パーミルにも達する勾配と、ループ線、スイッチ・バック、ケーブル線などが検討されました。また当時ドイツに留学中の鉄道局技師仙石貢と吉川三次郎によるアプト式の紹介などもあり、最終的には建設費用等の理由から、アプト式により66.7パーミルの勾配を乗り切る方式に決定し、明治24(1891)年着工、明治26(1893)年開通しました。・・・」(大木利治「急勾配に挑んだ軌跡〜信越本線碓氷峠アプト式鉄道跡〜」『技術と教育』第215号 技術教育研究会 1990年7月


技術のわくわく探検記  産業技術遺産探訪  技術科@スクール