産業技術遺産探訪 2003.5.20.

旧 東海道本線 稲荷駅ランプ小屋
竣工:1880(明治13)年
設計・施工:不詳
煉瓦造平屋建 桟瓦葺 切妻屋根
京都府京都市伏見区深草稲荷 JR奈良線・稲荷駅  

 伏見稲荷大社への最寄駅であるJR奈良線・稲荷駅は、かつては東海道線の駅でした。現在のJR東海道線・京都駅〜山科駅間にある「東山トンネル」が開通するまでは、東海道線は京都駅からいったん稲荷駅まで南下したのち現在の東名高速道路に沿って山科、大谷、馬場(膳所)を結んでいました。
 この旧・東海道線 稲荷駅ランプ小屋は、現在のJR奈良線・稲荷駅の改札口南側にあり、次のような解説が掲示されていました。

国鉄最古の建物 ランプ小屋

旧東海道本線


(施工)明治11年8月21日
(完成)明治13年7月15日
(廃止)大正10年8月1日

 大正10年、現在の東海道本線のルートである膳所〜京都間が開通するまでは、旧東海道本線(馬場(膳所)〜大谷〜山科〜稲荷〜京都)が東西両京を結ぶ幹線として活躍していました。
 この線区の建設には非常な難工事(山間部を通過する始めての鉄道であったこととトンネルの掘削や丘陵部の切取り築堤など)が伴い当時としては大がかりな土木工事でしたが特筆することは、この工事がそれまで外国人に依存していたことから脱却し、すべて日本人の手により建設が進められたことです。
 明治13年7月14日、明治天皇臨御のもとに開通式を挙行、翌15日、全線開通のはこびとなりました。そして最急行が走破するなど華かな時代を迎えたわけですが、急曲線の連続急勾配に禍いされて大正4年から線路変更工事が開始され、その完成とともに廃線の運命をたどりました。
 「ランプ小屋」は旧東海道線の建物として残ったただ一つのもので、同時に国鉄最古の建物として貴重な遺構の一つとなっております。

 ランプ小屋内部には、旧東海道本線開通当時に使われていた鉄道用品等が保管されていました。


旧・逢坂山隧道(東海道本線旧線・滋賀県大津市)


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