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2013年

蚕(カイコ)
鱗翅目カイコガ科

 カイコの飼育は2000年に初めて行い、2006年から毎年続けて行っていますが、2012年は2008年以後、久しぶりにたくさんの蚕(約2400頭 絹織物1反に必要な繭は約2600粒)を飼育しました。中学校 技術科での学習「生物育成の技術」と「産業技術史」の教材としても使っています。

 
2013年の夏(2013年7月28日〜8月)は、日本種・在来種「杲(尾高)」「日本錦」、中国種・在来種「大造(長野)」「淅江」「茶斑」「瘤蚕」「アモイモリコード」「改じょう」「大安橋」「天門」「棲キョウ」、突然変異種「白卵油」を飼育しました。蚕の在来種は、農作物の伝統野菜に相当するもので、日本各地の養蚕農家や蚕業試験場・大学・専門学校・蚕糸学校などの研究教育機関等で飼育されていたものです。

 養蚕のために農家で飼育されるカイコは、丈夫で病気にかかりにくく糸の生産量の多い「交雑種」がほとんどを占めています。昨年飼育した交雑種は、今年9月に飼育する予定です。在来種についても、来年は生徒たちが観察・実験できるように飼育していきたいと考えています。

「農業生物資源研究所 北杜地区」(山梨県北杜市)から
提供していただいた
カイコは5齢なので、1週間ほど桑を
与えて飼育します。
「まぶし(蔟)」を設置して蚕が繭を
つくりやすくしてやります。
標本用の繭は、天日干しで殺蛹します。
袋から出して十分に乾燥させないと
保存中にカビが発生してしまいます。


   5齢(幼虫) ->   繭  ->   カイコガ(成虫)  ->  卵(蚕種)
杲(尾高)  Hinode 
日本種・在来種(春蚕期)
群馬県の尾高発二が保有していたもので、群馬県蚕業試験場(前橋)が保存していたもの
一化性白繭系日中固定種
↑ 杲(尾高)  Hinode
日本錦  Yamatonishiki  
日本種・在来種(春蚕期)
二化性四眠性
九州大学 田中義麿 博士が保存していたもの
長野県東筑摩郡片丘村の田中右一(九州大学 田中義麿博士の父)が選出命名したもの。明治24年同郡和田村,上条末吉が品評会に出品した晩秋繭、東錦(アズマニシキ)の優良なることを見て、同種を上条秀三郎なる人から得て、これに洗馬村熊谷某の白竜を交雑し、その後数代にわたり選別淘汰を重ね、明治27年、日清戦争の頃に「日本錦」と命名発表
↑ 日本錦  Yamatonishiki
大造(長野) Daizo
中国種・在来種(春蚕期)
二化性緑繭系中国種 
長野県蚕業試験場が保存していたもの
↑ 大造(長野) Daizo
浙江  Sekko
中国種・在来種(春蚕期)
愛知県蚕業試験場(一宮)で保存されていたもの
群馬、静岡、愛知、三重、鳥取、の各県蚕業試験場において浙江種にそれぞれ独自の改良を加えて育成し、「浙江」として配付したもので三重浙江、静岡浙江は有名。「浙江」の原蚕種は県蚕業試験場だけでなく蚕種製造者も製造していた。
↑ 浙江  Sekko
茶斑  Chahan
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
兵庫県蚕業試験場
↑ 茶斑  Chahan
瘤蚕  Kobuko 
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
群馬県蚕業試験場(前橋)
↑ 瘤蚕  Kobuko
アモイモリコード Amoimorikod
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
亘理養蚕校が保有していたもの
↑ アモイモリコード Amoimorikod
改じょう Kaijo
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
蚕業試験場
↑ 改じょう Kaijo
大安橋 Daiankyo
中国種・在来種(春蚕期)
二化性四眠性
岩手県の橋本善太が日本二化白繭種×中国金黄種から育成したものを静岡県の木下松平が保有していたもの
↑ 大安橋 Daiankyo
天門  Tenmon
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
島根県蚕業試験場が保有していたもの
↑ 天門  Tenmon
棲きょう Seikyo
中国種・在来種(春蚕期)
一化性四眠性
亘理養蚕校が保有していたもの
↑ 棲きょう Seikyo
白卵油
突然変異種 卵形質(春蚕期)
遺伝子組成  (w-3on)
体色 油
↑ 白卵油

独立行政法人 農業生物資源研究所

蚕糸・昆虫農業技術研究所
蚕糸・昆虫農業技術研究所は、2001年4月1日より独立行政法人 農業生物資源研究所として組織改編しました。
カイコ遺伝資源(保存蚕品種)

返田助光ら (1991): カイコ遺伝資源の保存と利用、蚕糸・昆虫農業技術研究所、PP68

平田保夫 (1991): 蚕糸試験場における蚕品種の育成、蚕糸昆虫研資料、8、P23〜P87
農林水産省依託蚕品種性状調査及び蚕品種共通試験に提出した蚕糸試験場の育成蚕品種

平塚英吉編著:近代蚕品種育種記録 1961(昭和36)年、日本蚕品種実用系譜 1969(昭和44)年

森精(監修:日本蚕糸学会出版委員会)「カイコと教育・研究」(昆虫利用科学シリーズ 6)サイエンスハウス 1995年


農業生物資源研究所 北杜地区

山梨県北杜市山梨県北杜市小淵沢町6585

かつて、蚕を飼育していた建物が現存しています。
2013年7月28日 撮影
旧 研究所

「農業生物資源研究所 北杜地区」では将来の新素材開発(医療や電子部品の素材)等の貴重な資源として、家蚕遺伝資源472品種を保存・飼育しています。
現在、日本では約600種類のカイコが知られています。 


「遺伝素材実験棟」で遺伝資源保存のために飼育されています。

 生殖器官そのものを冷凍保存するという研究も行われているそうです。昆虫には臓器の移植にともなう拒絶反応というものがないので、こうした特徴を生かした保存技術の開発が進められています。


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