産業技術遺産探訪 2006.6.10./6.17./8.1.

横浜水道
旧 青山取水口
1897(明治30)年竣工
近代水道百選

旧 青山沈殿池
1897(明治30)年竣工
国登録有形文化財
近代水道百選
横浜水道の取水口が移転した当時の唯一の残存施設
石垣(玉石乱積)で四辺を囲まれた沈殿池
半分埋め立てで、一辺は土手化
30.3m×30.3m→15.1m 北側半分を保存

青山隧道
1915(大正4)年竣工
高さ2.12m×幅2.12m×長さ864m
馬蹄形 煉瓦造 勾配1/1000

旧 青山水源事務所

青山取水100周年記念の碑

神奈川県相模原市津久井町青山
(旧 津久井郡津久井町青山)


 創設水道通水後の人口の増加に伴う創設水道の水不足に対処するために設けられた施設で、現在、横浜市水道局青山水源事務所構内にその旧 青山取水口と旧 青山沈殿池(竣工時の半分)が保存されています。

 旧 青山取水施設は、道志川右岸の岸壁側部にある自然にできた小さな湾を利用して、鉄柵に玉石をつめた砂利壁(高さ4.55m、長さ8.11m、幅1.51m)で道志川と仕切り、その一部に幅0.9mの水門を取り付けた構造となっていました。水門は通常は開いており、洪水の時には閉じて濁水が直接流入するのを防ぎ、砂利壁を通して浸透してくる水を取り入れるようになっていました。
 また沈殿池はコンクリート造り、長さ30.30m×幅30.30m×深さ5.91mで、中央に高さ2.12mの間壁があり2分されており、2池で容量1600m3でした。底部は沈殿物の清掃がしやすいように100分の1の傾斜がつけられていました。洪水の時には、道志川側から砂利層を浸透した伏流水が玉石の間から沈殿池に流入し、水量を補うように工夫された施設になっていました。この沈殿池で普通沈殿処理を行った後に給水されました。
 1901(明治34)年に内径22インチ(55.9m)取水管が増設されましたが、取水口が第2期拡張工事(1910(明治43)年8月起工、1915(大正4)年3月竣工)で、さらに1km上流の「鮑子(あびこ)取水堰」に変更され、沈殿池も新設(現在の青山沈殿池)されたため、この取水施設は廃止となり、現在は青山沈殿池構内に旧取水口と旧沈殿池の北側半分(現在 長さ15.1m×30.3m×深さ2.12m)が保存されています。


旧 青山取水口
1897(明治30)年竣工
近代水道百選

旧 青山取水口

 この取水口は、明治30年(1897年)から大正4年(1915年)まで使用されていたもので、自然の地形を巧みに利用し、道志川の水を取り入れ、ポンプ等の動力を使わずに横浜へ送っていました。
 この取水口の特徴は、洪水時に流れてくる大きな浮遊物を取り込まないよう工夫してあることです。

取水の方法
平常時
取水ゲート(1)の扉を吊り上げ、開けた状態で水を取り入れた。
洪水時
取水ゲート(1)の扉を下ろして閉じ、鉄柵(玉石詰)(2)の玉石の隙間を通して水を取り入れ、ごみ等のはいるのを防いだ。

各部の名称と役割
(3)スクリーン
木片など大きな浮遊物を取り除く
(4)ストレーナー
木の葉や砂利等を取り除く
(5)制水井
水の取り入れ量を調整する
(6)導水管
取り入れた水を沈でん池に送る管
(7)波防管
導水管の空気抜きと取り入れる水を量る
(8)操作架台
制水弁の操作やストレーナーの清掃等を行うところ
洪水時でも行えるように高い場所に設置した
(1)取水ゲート (2)鉄柵(玉石詰)


(3)スクリーン (4)ストレーナー (5)制水井


(7)波防管 (8)操作架台

旧 青山沈殿池
1897(明治30)年竣工
国登録有形文化財
近代水道百選
横浜水道の取水口が移転した当時の唯一の残存施設
石垣(玉石乱積)で四辺を囲まれた沈殿池
半分埋め立てで、一辺は土手化
竣工時 長さ30.30m×幅30.30m×深さ5.91m 池数 2池 容量1600m3
現在 長さ15.1m×30.3m×深さ2.12m 竣工時の北側半分を保存

大雨で川の水が濁り水嵩(みずかさ)が増した時は、石垣の間から浸透したきれいな水が流入する構造になっていました。
現在は2池のうち1池を記念施設として保存しています。


青山隧道
1915(大正4)年竣工
高さ2.12m×幅2.12m×長さ864m
馬蹄形 煉瓦造 勾配1/1000

鮑子(あびこ)取水口で取り入れた道志川の水を排砂池まで導くトンネルです。


旧 青山水源事務所


青山取水100周年記念の碑


近代水道百選

 1987(昭和62)年は、1887(明治20)年に横浜市に日本で初めての近代水道が誕生してからちょうど100周年になります。そこで、厚生省(現在の厚生労働省)の企画により、この100年間に建設された全国の水道施設の中から、近代水道史的に、水道技術史的に、環境景観的にみて価値あるものを検討して、1985(昭和60)年5月に「近代水道百選」が選定されました。
 横浜市からは、「水道創設記念噴水塔」、「旧 三井用水取入口」、「旧 青山取入口と沈殿池」、「城山隧道」の4箇所が選ばれました。

近代水道百選委員会 委員長 小林 重一
企画 厚生省水道環境部 主催 日本水道新聞社 後援 (社)日本水道協会


産業技術遺産探訪〜横浜水道


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