産業技術遺産探訪 2003.12.23.

藤倉水源地水道施設
1903(明治36)年10月着工
1911(明治44)年 8月竣工

国指定重要文化財(近代化遺産)
1993(平成5)年8月17日指定

重力式コンクリートダム
本堰堤、副堰堤、放水路、進入道路、護岸
(本堰堤の鉄骨トラス橋、送水、排砂設備を含む)
水道用地
貯水池用地、沈殿池用地、送水管用地

秋田県秋田市山内字上台、大畑

 「藤倉水源地水道施設」は、秋田市内への水道用水・防火用水を供給するための水道施設として、1903(明治36)年10月に着工し、1911(明治44)年8月に竣工しました。明治期の大規模な事業で国の補助を受けることなく行われたものはほとんどなく、秋田市が独自で行なった「藤倉水源地水道施設」の建設事業は、こうした面からも貴重なものです。1973(昭和48)年9月に、秋田市の水道用水源が「藤倉水源地水道施設」のある旭川から雄物川に変更され、藤倉ダムからの取水が停止した際に、ダム本体が老朽化したこともあり建設省からダム撤去が求められましたが、秋田市水道局などによる歴史的なダムを市民のために存置すべきであるというはたらきかけによって貴重な技術遺産が守られてきました。1993(平成 5)年8月17日、国重要文化財に指定されました。「近代化遺産」としては、「碓氷峠鉄道施設」(群馬県碓氷郡松井田町)とともに全国で初めて国の重要文化財となりました。


秋田市上水道誕生の地
藤倉ダム
Fujikura Dam
(施設の概要)
水系及び河川名 雄物川水系旭川
ダムの位置 秋田市山内字上台地内
ダム設置の目的 秋田市上水道の水源
工期 明治38年〜明治44年
型式 重力式コンクリートダム(直線勾配型大規模堰堤の粗石コンクリート・ダム)
堤高 16.30m 湛水面積0.033km2
堤頂長 65.10m 有効貯水容量 239000m3
堤体積 63000m3 工事費 143650円(当時)

(沿革)
1889(明治22)年     水道創設取調委員会を設置
1903(明治36)年 8月 水道布設の認可を取得(藤倉ダム建設計画決定)
1903(明治36)年10月 水道施設工事に着手
1907(明治40)年10月 給水を開始、「大木屋(おおごや)浄水場」までの送水管10450m
1911(明治44)年 8月 水道施設の完成(計画給水人口4万人、1日最大給水量3000m3)、ダム取水計画量1日8000m3
1922(大正11)年11月〜1922(大正15)年 9月 ダム貯水池を浚渫し、土砂52400m3を除去
1946(昭和21)年 7月 ダム取水計画量1日10000m3に変更
1973(昭和48)年 9月 ダムからの取水を停止(水源を旭川から雄物川に変更)
1978(昭和53)年     藤倉堰堤の機能終了と老朽化により建設省から原状回復(ダム撤去)を求められる。
1980(昭和55)年 1月 永川強氏により、明治期の水道用堰堤として藤倉水源地堰堤が重要な建造物であることが指摘される。
1985(昭和60)年 5月 ダム施設「近代水道」百選に選定(企画 厚生省 主催 日本水道新聞社)
1987(昭和62)年11月〜1988(昭和63)年10月 ダム補修工事の施工(堰堤頂部の空洞をグラウト注入で補充、石積目地の再充填)
1990(平成 2)年 3月 秋田県指定文化財
1993(平成 5)年 8月17日 国重要文化財に指定

2000(平成12)年     ダム補修工事の施工



重力式コンクリートダムの本堰堤
高さ16.3m、長さ65.1m、越流式の堰堤部分は中央部29.7m
堰堤表面の粗石が美しい水流をつくっています。
本堰堤の下流側20mにある「副堰堤」
高さ2.1m、長さ28.6m
本堰堤基底部の洗掘による破壊を防止するために水をためて本堰堤から越流し落下する水の衝撃を緩和させています。


本堰堤の管理用「堤上架橋」は「曲弦ワーレン・トラス橋」(長さ30.6m)で、
1911(明治44)年「東京石川島造船所(現在の石川島播磨重工業)」製造


橋門構の飾り模様は明治期に特有なものです。
堰堤南側には取水設備のある半円形突出部「バルブ塔」があります。


放水路
本堰堤の北側にある放水路は幅15.15m(最大)、延長122.65mで、流量調節のためにつくられました。


このほか、竣工当時は「防砂提」(3基)、「流材防備工」がありました。



「沈殿池」跡
「本堰堤」の下流約370mの地点に「沈殿池」が設置されていました。
「沈殿池」の規模は、縦46.82m、横35.61m、深さ2.73m、容量3400立方メートル
この「沈殿池」から「大木屋(おおごや)浄水場」まで、送水管(10450m)で送水していました。
ここには、かつて事務所、番人公舎、倉庫がありました。現在は門柱のみが保存されています。


2007年の水道百年に向けて周辺を公園化した活用が策定されています。
「沈殿地」跡地前に駐車スペースがあり、藤倉水源地堰堤までは徒歩で約300m


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