産業技術遺産探訪・技術のわくわく探検記 2000.8.23.

ヤンマー(株) 尼崎工場

兵庫県尼崎市長洲東通1丁目1番1号

  実用的な世界最古のディーゼルエンジン、ヤンマー(株)ディーゼルエンジン1号機 ほか

世界最古のディーゼルエンジン(1899年製)
WORLD'S OLDEST DIESEL ENGINE(1899)
M.A.N AUGS RGWORKS(GERMANY)

軸馬力       20PS
回転数      180rpm
シリンダー内径 210mm
行程        390mm
機関重量     5800kg
 ヤンマー(株)尼崎工場の陳列館には、「世界最古のディーゼルエンジン 1899年 MAN社(ドイツ)製」が展示されています。
 1933(昭和8)年、それまで実用化が困難とされていた小型ディーゼルエンジンの開発に世界で初めて成功した山岡孫吉は、1955(昭和30)年にドイツ発明協会から「ディーゼル金賞碑」を授与、さらに1957(昭和32)年には「ドイツ大功労十字章」が授与されました。
 展示されている「世界最古のディーゼルエンジン 1899年 MAN社(ドイツ)製」は、ディーゼルエンジンを発明したルドルフ・クリスチアン・カール・ディーゼル(Rudolf Christian Karl Diesel、1858-1913)が技術者として従事していた「MAN」社(Maschinenfabrik Augsburg-Nurnberg AG)からヤンマー(株)へ寄贈されたもので、MAN社(ドイツ)とここに展示されている2台だけが現存する貴重なエンジンです。
 なお、この関係から尼崎市とアウクスブルク市は姉妹都市提携(1959(昭和34)年)を結んでいます。
駆動する様子を見ることが出来ます。(ただし電動機により回転させています)
Vereiniqte Maschinenfabrik Augsburg und
Maschinenbaugesellschaft Nurnberg A.C.
Werk Augsburg
No.21 Warme-Motor  ̄atent Diesel 1899
実用になる世界最古のディーゼルエンジンの記録書(展示されているものはコピー)

HISTORICAL DIESEL ENGINE DOCUMENT PRESENTED TO TANMAR BY THE M.A.N. COMPANY OF GERMANY (COPY) 
 ヤンマー陳列館に展示中されている、実用的な世界最古のディーゼルエンジンの設計、製造の記録書で、1899年、ドイツM.A.N.社アウグスブルグ工場で作られた、出力20馬力、毎分回転数180回転、工場製造番号第21号ディーゼルエンジンについての記録で、ここには、ディーゼルエンジンの設計、製造の過程や、1937年までの38年間にわたる稼働の状況が詳細に記録されており、ディーゼル・エンジンの歴史を記録する貴重な文献です。


ヤンマー ディーゼルエンジン1号機
立型水冷4サイクルディーゼルエンジン (1939年製)
VERTICAL TYPE WATER-COOLED 4CYCLE DIESEL ENGINE(1939)

形式    4DM
軸馬力 130PS
回転数 450rpm
シリンダー内径 210mm
行程   340mm
機関重量 6700kg
 このエンジンは、1939(昭和14)年、ヤンマー((株)山岡発動機工作所、山岡内燃機(株))により大形ディーゼルエンジンとして最初に製作され、以降10年以上にわたり発電機用原動機として稼働していたものです。

尼崎工場内にある陳列館
ここに、実用的な世界最古のディーゼルエンジン、ヤンマー(株)ディーゼルエンジン1号機などが保存・展示されています。
入り口のドアにはヤンマーディーゼルのマスコットキャラクター「ヤン坊・マー坊」!(^^)

特機事業本部総務部専任課長・中井長久さんにディーゼルエンジンについて詳しいお話をお伺いしました。
ありがとうございました。


とっておきの話〜ヤンマー(株)創業者・山岡孫吉


とっておきの話http://www.gijyutu.com/kyouzai/speech/yanmer.htm(1998年に「技術のおもしろ教材集」へ掲載されたものです。)

とっておきの話? ディーゼルエンジン


 機械(原動機)の学習で、ディーゼルエンジンに入るときには、ここ何年かは「ヤンマー・ディーゼル」の歌から始まります。別にコマーシャルしようというのではなく、こちらでは、「ヤン坊・マー坊、天気予報」(毎日、夕方にテレビで放送されています)を知らない生徒がまったくいないからです。けれどもディーゼルエンジンそのものは誰も知らない・・・・

 今年もまたディーゼルエンジンの学習に入る前に、教材研究を兼ねて、インターネットでディーゼルエンジンについて調べているうちに、

小島直記 著 「エンジン一代〜山岡孫吉伝〜」 集英社(集英社文庫) 1983(昭和58)年

 という本のあることを知りました。北海道大学の科学史研究室のページにも「小説で読む日本の科学史・技術史」に紹介されています。けれども、すでに絶版になっていました。
 世界で初めて小型ディーゼルエンジンの実用化に成功した山岡孫吉・・・ルドルフ・ディーゼルとならんで山岡孫吉も授業で取り上げようと思いました。
 インターネットでこの本を探したところ、11月上旬に入手することができました。授業では、圧縮発火実験やディーゼルエンジンのビデオの視聴、ドイツ・MAN社がヤンマーディーゼルに寄贈した世界最初のディーゼルエンジン1号機(兵庫県尼崎市にあるヤンマーディーゼル尼崎工場に保存されており、その複製品が東京駅八重洲口前にあるヤンマーディーゼル東京支社と東京・船の科学館にあります)の写真などを使っていましたが、この本を読んで、ヤンマーの由来についても知り、授業でとっておきの話に使いました。生徒は「やまおか・まごきち」で「ヤンマー」でしょう・・・という予想です。

 大正9年、農業用3馬力石油エンジン(縦型)の試作品を完成させた山岡孫吉は、翌年3月に横型の変量式石油発動機を発表し、同時に「ヤンマー」の商標を登録しました。
 孫吉は、この農業用石油エンジンをつくったとき、「今年はトンボがたくさん飛んどる。きっと豊作やで・・・・」
と言っていた父親の言葉を思い起こしていました。自分の作った石油エンジンが、その豊作の使者でありたい。そうだ「トンボ印」こそ、もっともふさわしい・・・・そこで、「トンボ印」と名付けて新聞に広告したところ、静岡の醤油製造機器メーカーが攪拌器の商標として登録しており、侵害問題が起きてしまいます。商標を買い取ろうとしていた時、販売担当者の江波菊次郎(孫吉と同郷で小学校で2年後輩)が、「いっそトンボの中の親玉であるヤンマとしたら」と助言し、孫吉もトンボの親玉というのがいいし、ヤンマは山岡に近いので、「ヤンマ」に決めました。特許事務所で商標登録するとき、言いやすさをねらい「ヤンマー」とします。

 こんな話を生徒に聞かせてやりました。一番前の席に座っていた生徒の一人が「小さなものから大きなものまで動かす力だ・・・・」と思わず口ずさむ授業でした。


1959(昭和34)年 テレビで「ヤン坊マー坊天気予報」の提供開始。
2009(平成21)年 ヤン坊マー坊誕生50周年


「私に取り柄があるとすれば、ただエンジンが好きで好きでたまらず、それに没頭できたことだ。」山岡孫吉

(株)ヤンマー ヤンマーの歴史(http://www.yanmar.co.jp/aboutus/history.html)


YouTube -> ヤンマー100周年(歴史)CM  ヤン坊マー坊の歌


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