産業技術遺産探訪 2000.3.26./2000.5.7./2001.5.6./2006.10.28.

丸沼堰堤
(丸沼ダム)

国登録有形文化財
土木学会選奨土木遺産

1928(昭和3)年着工  
1931(昭和6)年9月竣工

バットレスダム(Battress Dam 中空堰堤式ダム、扶壁式ダム)
現存するバットレスダム6基中で国内最大

材質:鉄筋コンクリート
設計者:物部長穂(もののべながほ 1888-1941)、浅見東三、岩本常次
施工:鹿島組
所有者:東京電力株式会社

群馬県利根郡片品村大字東小川宇根子4658-4、4658-5

ダムの型式 扶壁式
ダムの高さ(堤高) 32.12m
ダムの頂長 88.23m
ダム天端の標高 1429.85m
満水位の標高 1427.88m
湛水面積 675000平方メートル
有効貯水量 11500000立方メートル
利用水深 28m

 土木耐震学の草分け、物部長穂(1888-1941 水利学)が設計した「バットレス・ダム」で、丸沼と大尻沼の境に建設されています。日本国内には同じ構造のダムが6基現存していますが、この「丸沼堰堤(丸沼ダム)」は改修されているものの、竣工当時の構造をたいへんよく残しています。現在でも東京電力の発電用ダムとして現役で使われています。


2006年10月28日撮影

国重要文化財 丸沼堰堤(まるぬまえんてい)
概要説明
 丸沼ダムは昭和6年(1931)、当時の上毛電力株式会社が建築した発電用のダムで、昭和初期に全国で8基のみ建設されたバットレスダムという形式である。しかも現存する同型ダム6基中では最大の規模を誇り、高山の厳寒地という悪条件下にあって70年以上に渡って現役で発電に利用されている。
 この特異な形式のダムは、土木構造物への耐震設計導入で有名な内務省土木試験所長の物部長穂の基本設計によるもので、昭和初期の我が国の土木建設技術が世界水準を超えて先進的な技術開発に挑戦した代表例ともいえる。現在の丸沼ダムは長期にわたる利用のために何度かの改修を経ているが、いずれの工事も当初の設計意図と構造形式を尊重したものであり、外観や基本的な構造躯体は往時の技術水準を現在によく伝えている。

基本データ
所在地:群馬県利根郡片品村大字東小川宇根子4658-4、4658-5
数量:一基
年代:バットレスダム(Battress Dam)
[中空堰堤式ダム・扶壁(ふへき)式ダムとも呼称]
寸法:堤頂長88.2m、堤高32.1m
材質:鉄筋コンクリート
設計者:物部長穂(もののべながほ)、浅見東三、岩本常次
所有者:東京電力株式会社


 「近代化遺産 全国一斉公開2006」で施設内が特別公開されました。
2006年10月28日

 ダム天端部とダム下部を結ぶ
連絡通路。長い階段が続きます。
 水圧の負荷による変位を測定する
ためのセンサーが、ダム天端からダム
の下まで伸びています。

バットレスダム(Battress Dam)
 バットレスダムは、水を堰き止めるための鉄筋コンクリート製の遮水板と、遮水板への水圧を支えるための鉄筋コンクリートでつくられたバットレス(Battress)と呼ばれている擁壁(支えるための壁)で構成されたダムです。「重力ダム」に比べて、使用されるコンクリート量を節約でき、材料のコストが軽減できます。鉄筋コンクリートの原材料が不足していた時期に建造されました。保守管理が、その他の型式のダムに比べて複雑であるため、新たに建設されるダム(堰堤)の型式としては採用されていません。


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