’99プラモデル・ラジコンフェア
 (模型用スチームエンジン・グローエンジン見学記)
 東京ビッグサイト(東京国際展示場)(1999.10.10)

 教材・教具の開発に役立つ、模型用のスチームエンジンやグローエンジンを見てきました。中にはヘロンの反動蒸気タービン汽力球とか汽力計とも)や、産業革命期の動力用の蒸気エンジンを使った工場の模型スティーブンソンのロケット号のライブスチーム空機用星形エンジンの実物(シリンダーやキャブレターが分解して展示)がありました。

ヘロンの反動蒸気タービン

 ヘロンは紀元前1世紀頃のアレキサンドリアで機械や数学について研究をしていた人物で、著書「機械学」(静力学と動力学の基礎と応用について述べる)は、アラビア語訳で現存しています。
 蒸気タービンは高温・高圧の蒸気の熱エネルギーを、ノズルや固定された羽根によって運動エネルギーに変換して、この衝動力・反動力で羽根車を回転させて動力を発生させる装置です。現在では火力発電所や原子力発電所での発電機を回転させるための装置として使われています。
 紀元前120年頃、アレキサンドリアの「ヘロン」は、球の反対の2方向から接線方向へ蒸気を噴出させて球を回転させる玩具!(^^)をつくりました。これは「純反動タービンの原理」によるものと言えます。
 蒸気タービンに関する考案は、その後1629年のブランカ(B.de Branca)が「衝動タービン」の原理を提案するまで見られませんでした!蒸気タービンの実用化は1883年にド・ラヴァルの衝動タービン以降でした。
 蒸気タービンそのものの原理は簡単ですが、19世紀にいたるまで実用化はできませんでした。なぜでしょうか・・・これは高速回転に耐えられる材料・設計・工作技術が追いつかなかったためです。「実用化」・・・これは原理の考案と同じくらい、いやそれ以上に難しいことなのです。

 船舶模型用の蒸気エンジン製造ではトップメーカーである「斎藤製作所」が、蒸気エンジンのルーツとも言える「ヘロンの反動蒸気タービン」の模型(復元といった方がいいでしょう)をつくっています。(数年前にテレビでも紹介されていました。ヤマハ発動機が提供する番組です。)展示されていたものは高さ30cmくらいのものです。

(有)斎藤製作所のブースでは、さまざまな模型用蒸気エンジンを見ることができました。

蒸気エンジンを実際に動かしてくれました。
表面積を大きくする工夫が見られる
ボイラー内部、実習での参考に(^^)
斎藤製作所製のスチームエンジン・ラインナップです!

19世紀後半の蒸気エンジン・プラント

 斎藤製作所のブースでは、19世紀後半の蒸気エンジン・プラントのスケールモデルも展示されていました。
 17世紀後半から18世紀前半にかけてのイギリスの産業革命によって、蒸気機関は工場の動力や鉄道・船舶などのエンジンとして実用化していきました。1900年頃には蒸気機関の完熟期を迎えます。この模型は、当時のスチーム・プラントを再現したもので、蒸気機関がダブル・アクション方式を採用している様子が、実際に可動する模型(ライブ・スチーム)として見ることができます。

工場全体の様子です。 丁寧に再現されたスチームエンジン!
まさに実物! ボイラー室

実物の航空機用空冷二重星型18気筒エンジン

 斎藤製作所所蔵の航空機用二重星型18気筒エンジンも展示されていました。
 このエンジンは米国のプラット&ホイットニー(PRATT&WHITNEY)製(1944年)のものです。戦闘機用エンジンとして多くの機種に搭載され、戦後はC46輸送機使用されました。

18気筒でシリンダー配置が星型で前後に二重、出力2000馬力、重量1000kg 同じ時期に日本で製作された中島飛行機製「ハー45型(誉)エンジン」です。ほとんど同じ性能ですが、重量が850kgと軽量です。4式戦闘機「疾風」に搭載されていました。富士重工が国立科学博物館に寄贈・展示されています。
ディーゼルエンジン並みのシリンダーです。キャブレターも巨大です。初めて見ました。びっくり!!
製造元はフォード・モーター・カンパニー・・・・自動車メーカーも戦時動員されていたわけです。点火系統の電装関係は「ゼネラル・エレクトリック」・・・エジソンとフォードの関係がこんなところにも伺えます。 戦後、C46輸送機のエンジンとして搭載されていた頃、1973(昭和48)年に三菱重工で整備されていたようです。

スティーブンソン「ロケット号」

O.S(小川精機)のブースでは、スティーブンソンの「ロケット号」(ライブスチーム)がありました。スティーブンソンの「ロケット号」は、1998年8月に開催された「大英科学博物館(英国立科学産業博物館)展」に実物が展示されていました。

全長600mm、全高425mm、全幅185mm、重量12kg
完成機価格398000円(キット28800円!)(^^;)
ダミーでないところがすごいですね。 部品一覧です。

大英科学博物館展」についてのレポートは、こちらをクリックしてください。


編集後記

 プラスチックモデルは、プラスチックを金型に射出成形させて部品をつくっていくわけですが、メーカーのブースには「金型」という文字もたくさん見られました。技術科での材料や加工の学習で、こうした生徒にとって身近で親しみやすいものを提示してやると、楽しい学習になると思います。
 また、これまで不可能であった「ポリエチレン」「ポリプロピレン」「シリコンゴム」「ポリアセタール」「フッ素樹脂」などを接着できる新しい専用接着剤「セメダインPPX」というのが紹介されていました。
 鎌倉への砂鉄採集のついでに行くことになったのですが、このイベントを教えてくれた小林君に感謝いたします。
 「人生いたるところに教材のヒントあり・・・」ですね(^^)



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