産業技術遺産探訪 2011.8.23.

青函連絡船八甲田丸」・青森桟橋第2岸壁可動橋

日本機械学会「機械遺産」経済産業省近代化産業遺産

青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸・青函鉄道連絡船記念館

青函連絡船「八甲田丸」青森県青森市柳川1丁目112番15地先
可動橋 青森県青森市柳川1丁目



煙突に国鉄の「JNR」マーク

青函連絡船「八甲田丸」(客載車両渡船)

1964(昭和39)年8月12日就航
三菱神戸造船所 建造
全長 132.0m
全幅 17.9m
総トン数 5382.65トン
総出力 12800馬力
旅客定員 1286名
積載車両 48両
現役期間23年7ヶ月(青函連絡船55隻中最長期間)
青函連絡船最終航行船 1988(昭和63)年3月13日

機関室(エンジンルーム)

単動4サイクル・トランクピストン(型)排気ターボ付ディーゼルエンジン

津軽丸II型「八甲田丸」の機関配置

青函連絡船「八甲田丸」は船底部の機関室上部に、車両を格納するための大空間をもつ車両甲板が設置されています。船の安定性のために重心を低くしなければならないため、大型の高出力機関に匹敵する出力となるように(八甲田丸の出力は12800馬力)、1基が1600馬力の中型ディーゼル機関8基を4基づつ組み合わせて、流体変速機(トルクコンバーター)を介して右舷・左舷の各1本ずつのプロペラ(スクリュー)を回すように設計されています。このような機関配置をマルチプル・ギヤード・ディーゼル方式といいます。そのため機関室の高さを低くして重心も下げることが可能となりました。また、この方式では、搭載されているディーゼル機関を1基ごとに制御でき、1〜2基のディーゼル機関がエンジン停止しても運行上に特に支障がないため、定時運行が不可欠の連絡船に適したシステムでした。

マルチプル・ギヤード・ディーゼル方式は、1964(昭和39)年に就航した津軽丸IIをはじめとした同型の青函連絡船で採用されました。


総括制御室のマルチプル・ギヤード・ディーゼル方式を示す監視盤(制御表示盤)

発電機室

主発電機(700KVA)

八甲田丸にはディーゼル駆動の主発電機(700KVA)3台をはじめ主軸駆動発電機(900KVA)1台、さらにディーゼル駆動の補助発電機(70KVA)と非常用電源が搭載されていました。

総括制御室

車両甲板


「ヒ600」(控車)
連絡船の車両甲板へ車両を出し入れする時に、可動橋上に重量の大きい機関車が乗らなくて済むように、機関車と出し入れする車両との間に連結する専用の貨車(控車)で、自重は約7.7トン

操舵室(ブリッジ)

無線室


鉄道連絡船は可動橋を介して鉄道車両の出し入れを行います。可動橋には船の上下・左右動やねじれなどに付き従うことのできるように設計されていますが、連絡船にも次のような工夫が施されています。

ヒーリング装置
貨車の出し入れ作業中に、船が傾いて車両甲板と可動橋のレールが外れないように、船の左右に設けられたヒーリングタンクへ、ポンプで海水を出し入れして、貨車の重さと船のバランスを調整する装置です。
津軽丸II型連絡船からは、さらに、船と可動橋との接続を容易にするため、船首と船尾にもトリミングタンクが備わり、船の前後の傾きも調整できるようになりました。

スタビライザー
船体の両側に、向きや角度を調節できる長いヒレを突き出し、船の横揺れを防ぐ装置です。
青函航路では、津軽丸II型連絡船の第7船「十和田丸」に、1981(昭和56)年に初めて取り付けられました。

可変ピッチプロペラ(C・P・P)
プロペラの角度を自由に変え、船の速度や前後進、方向転換や停止などの運動を行うことが出来る推進装置です。船の停止時や前進から後進へと移るときなども、エンジンを止める必要がなく、微妙な速度の調整も楽に出来るようになっています。

バウ・スラスタ(B・T)
船が出港する時には、曳き船(補助汽船)によって船を桟橋から引き離したのち、エンジンを始動させて自力航進を始めます。バウ・スラスタは曳き船(補助汽船)の助けを借りず、自力で船体を桟橋から離すための装置です。船首部の海面下に穴を開け、ここに横向きのプロペラを設け、プロペラの回転に応じて起こる水流によって船体を横方向に動かします。



青函船舶鉄道管理局 青森さん橋

青森桟橋第2岸壁可動橋(青森第二岸可動橋)

可動橋は、陸上側に支点を持つ「基本桁」と基本桁と船の間で、船の上下・左右動やねじれなどに付き従うことのできる「補助桁」で構成されています。

青森桟橋第2岸壁の改良型可動橋
1951(昭和26)年〜1988(昭和63)年
旧型可動橋を、ほぼ新型可動橋の仕様で改造したもので、1951(昭和26)年から1954(昭和29)年にかけて改良されました。
端桁 全長5m、基本桁 全長28m、補助桁 全長12m

新型可動橋とは、1944(昭和19)年〜1988(昭和63)年に設置された可動橋の様式で、基本桁(全長28m)の陸側に端桁を設けてレールの折れ曲がる角度を和らげ、3線式の橋桁を鋼製門構からワイヤーで吊り下げ、電動式で上下させました。1975(昭和50)年9月からはリモコン操作が出来るように改良されました。補助桁は全長12mでした。
青森桟橋第3岸壁に設けられていた新型可動橋では、一般貨車が、基本桁(下端から上端まで3.16m可動)と補助桁(下端から上端まで0.7m可動)の間の角度が50/1000、船の傾きが±4度の時にも最高時速6キロメートルで通れるようになっていました。


青森市港湾文化交流施設「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」http://www7.ocn.ne.jp/~hakkouda/hakoindex.html


もどる

産業技術遺産探訪  技術科@スクール