石井閘門

国指定重要文化財

１８８０（明治１３）年竣工

宮城県石巻市水押三丁目６

　明治政府が近代港建設をめざし、内務卿・大久保利通の指導のもとに計画した野蒜築港に関連して、１８７６（明治９）年９月、オランダ人技師ファン・ドールン（C.J.van Doorn）は大久保利通の命令によって野蒜築港計画に関する現地調査を行い、鳴瀬川河口の野蒜を東北開発の拠点となる築港の適地として報告しました。藩政時代から内陸水運の盛んな地域であった北上川（現在の旧北上川）と野蒜港を内陸水路で連結するために、水深の浅い石巻の河口港や、天候に大きく左右される外洋を通らず安全に航行できる内陸水路として「北上運河」が開削されました。「北上運河」と北上川（現在の旧北上川）の分岐点に、水位調節と船舶の通過のために設けられた閘門が「石井閘門」です。１８７８（明治１１）年１０月８日、蛇田村高屋敷（現在の石巻市水押）で起工式が行われ、内務省土木局長・石井省一郎（いしいしょういちろう）、オランダ人技術者（内務省雇長工師）ファン・ドールン（C.J.van Doorn）、宮城県令・松平正直（まつだいらまさなお）が来賓として出席し、席上松平県令は土木局長の名前にちなみ、閘門名を「石井閘門（いしいこうもん）」と名付けました。「石井閘門」は１８８０（明治１３）年７月に完成しています。１８８４（明治１７）年の台風により野蒜港は被災し閉鎖されました。その後、野蒜港は復旧および第二期工事の膨大な工費のために予算として計上されず野蒜築港計画は中止となりました。その後、北上運河の航行も衰え、鉄道・道路の整備による物流の変化により役目を終えましたが、「北上運河」と「石井閘門」はその後も使用され続け、現在でも航行することができます。
　石井閘門は日本最古のレンガ造り西洋式閘門で、また可動ゲートを持つ閘門としても日本最古のものです。ゲートはもとは木製で１９６６（昭和４１）年に鋼製に更新されたものですが、閘門本体は建造当時のまま残されており、「近代化遺産」のひとつとして北上川、北上運河のシンボルとして保存されており、貴重な近代土木遺産として２００２（平成１４）年５月２３日、国重要文化財に指定されました。

　「閘門」は、水位差のある川や運河などで船舶を通すために設ける水位調節機能を持つ施設で、２つの水門の間に船舶を入れる「閘室」を持っています。

「旧・北上川」側の水門

閘門本体は竣工当時のまま残されています。

竣工当時のゲートは木製でしたが１９６６（昭和４１）年に鋼製（日本鋼管製）に更新されました。

閘室・・・「旧・北上川」側の水門と「北上運河」側の水門間は約５０ｍ

「北上運河（北北上運河）」側の水門

記念碑には「石井閘門図」と「野蒜築港実測全図」があります。

「木製マイターゲート敷き」当時の「石井閘門」
１８８８（明治２１）年５月

北上川の下流は１９３６（昭和１１）年に行われた改修で分流工事が行われたため、
新しい北上川（追波川）は追波湾（宮城県桃生郡北上町）に注がれるようになり、
分流点（宮城県本吉郡津山町）から下流部分のもとの北上川は「旧北上川」となっています。

　現在、「石井閘門」の脇には「北上運河（北北上運河）」の浄化導水樋管が設けられています。また、「北上川・運河交流館」（川と運河の博物館）ができました。

もどる