ものづくりシンポジウム

群馬県・前橋テルサ(1999.7.29.)

   

 7月29日に群馬県前橋市の前橋テルサで「ものづくりシンポジウム」が開催さ れました。アイディア対決ロボットコンテスト大学部門国際大会(IDC: International Design Contest)が今年群馬県前橋市 で開催されるため、関連行事として講演とパネルディスカッションか開かれました。
  会場で配布された要項には次のような開催目的が述べられています。

  ものづくりシンポジウム〜21世紀の人づくり・ものづくり 開催目的
 今世紀の科学技術の発展は、先進諸国に物質的な豊かさをもたらしましたが、 同時に多くの問題が地球上に発生しました。  21世紀を間近に控えた今、私たちは、豊かな地球をこのまま次の世紀に渡す ため、これらの問題を解決しなければなりません。  そのためには、私たちが、「問題を発生させた過去を非難する」という発想では なく、「問題解決に挑戦できる絶好のチャンス」と捉える発想を持つことが重要に なります。  このような発想のできる子どもを育てるためにはどのようにすればよいのでしょ う。  一緒に考えてみませんか。

 基調講演は
清水優史・東工大大学院教授で、テーマは「創造性を求めて」でした。 パネルディスカッションは、神本武征・東海大工学部教授、本川達雄・東工大教授、 ハリー・ウェスト・元MIT助教授(現在はデザイン会社勤務)と清水優史氏で行わ れました。
 
1988〜1994年にマサチューセッツ工科大学で機械工学を学ぶ学生たちのために「デザイン入門」という授業を担当していた当時MIT助教授であったハリー・ ウェスト氏が行っていたロボットコンテストが、東工大の清水優史氏やNHK、日本電気の協力で国際ロボットコンテストへと発展してきたわけです。今回のロボットコンテストは国内で初めて地方開催になるわけですが、清水氏が群馬県前橋市出身という ことが今回の開催につながっています。
 パネリストの
神本武征はディーゼルエンジンの燃焼・排気とそれらの光応用計測が専門です。そういえば、私も学生時代に原動機の授業でシリンダー部分が透明に なっていて内部の様子がよくわかる実験用の内燃機関を使った実験をやった覚えが ありますが、この時使った実験装置はアメリカ製でした。このシリンダーやピストン 部分をガラス製にすることは、設計が非常に難しいそうです。神本氏は高圧のディー ゼルエンジンについてシリンダー・ピストンをガラス製にし、内部を観察できるよう にした実験装置を開発し、燃料噴射による燃料の粒子の大きさをレーザを用いて高速 度撮影し、その影から粒子の直径を求めることに成功し、燃焼や排気ガスの解析を可能にした方です。
 
本川氏は「歌う生物学者!」として有名?ですね。「最近は学生にうけなくて・ ・」とこぼしていました(^^)NHKの人間大学をシリーズで見ていましたし、著書の 「ゾウの時 間ネズミの時間」もたいへんおもしろく読めました。(特に動物の足と機械の車輪を 比較したところはおもしろい・・・) 自然科学者(生物学者)としての視点から 「ものづくり」について辛口の意見はインパクトがありました。(本川氏は、東工大のなか で 一般教養の生物ということで、いつもいじめられてばかりなので・・・・と会場の笑 いを 誘っていました)もちろんしめくくりは本川氏作詞作曲の「ものづくりのうた」でし た。 (技術室でも掲示しようかな。)
  基調講演、パネルディスカッションを通して、次のような話題が話し合われました。
 ○創造性について
 ○工学教育における創造性とものづくり
  ○ロボットコンテストの教育的意義
 ○国際間でのものづくりとコミュニケーション〜フレームワークにもとづいた解釈
 ○環境問題とものづくり
 ○現在行われている実験実習の問題点
 ○意欲を大切にしないで知識の獲得が中心の現在の学校教育の問題点
  ○ロボットコンテストにみる日米の学生の発想のちがい
 ○つくるものがなくなった時代に
 ○なんのためにモノをつくるのか・・・工学のつきあたっている壁
 ○生きるためから時間つくりだすためのエネルギーを大量消費する現代社会
 ○大量生産と1回性・歴史性を大切にしたものづくりについて
 ○ものづくりの基本として大切にしなければならないこと
などでした。  


戻ります。