第38回関東甲信越地区中学校技術・家庭科研究大会

茨城大会 第4分科会

機械

 1999(平成11)年10月15日に開催された、第38回関東甲信越地区中学校技術・家庭科研究大会・茨城大会・第4分科会「機械」に参加する機会がありましたので、公開授業を中心にレポートします。 

第4分科会「機械」の会場は、茨城県石岡市立石岡中学校でした。石岡中学校は、南西に筑波山、南東に霞ヶ浦を望むJR常磐線石岡駅の東方にあります。平成10年度から「こねっとプラン」推進校として、インターネットを学習に取り入れた活用を推進しています。

 公開授業は「形状記憶合金を動力として利用した動くしくみを作ろう」(3学年)でした。動力に形状記憶合金を使い、エネルギーの変換と利用について学習するものです。形状記憶合金の温度変化による形状の変化にともなう力を利用して、ピンポン玉をできるだけ遠くへ飛ばせる(ころがせる)ように、材料や機械要素を使って機構を工夫しながら、発想したものを具体的な機械としてつくりあげ、テスト(試行)をくりかえしながら製作していくものです。ロボットコンテストに近い内容と言えるでしょう。

 授業は、石岡市立石岡中学校吉田淳教諭とゲストティーチャー(形状記憶合金を使った製品開発メーカーの方)、その他2名の技術科教員(近隣中学校教諭)の4名によるティーム・ティーチング形式で行われました。ゲストティーチャーとは、企業等の現場で実際に技術開発を行っているエンジニアを招待し、学習へのアドバイスと、技術開発の現場の紹介をしながら、技術科の学習と技術の世界のつながりについて簡単な講義をしていただく方と考えてよいと思います。2時間の技術科の授業の後半60分(前半40分)が公開授業でした。
「最先端活用例」という時間にゲストティーチャーによる授業が行われます。
 教師の試作モデルによる比較実験で、改良の一例を示しました。 「ポートフォリオ」と呼ばれる学習プリントやワークシートをファイルした綴じ込みケースから、チェックポイント表(設計のためのワークシート)を取り出して、グループで話し合いながら設計を検討していきます。
各グループの基本的な設計の概要
グループで協力して製作しています。 部品は必要に応じて選んでいきます。 公開授業のため体育館で授業でした。
てこの原理やプーリー(滑車)などを使って、おもしろいアイディアの機械がつくられていました。
 ゲストティーチャーによるレクチャー。形状記憶合金を用いた製品開発や今後
の開発のためのアイディアが紹介されました。アーム形ロボット、自転車のロッ
ク、医療機器への応用など・・・
 製品開発のための部品は、このモデリングマシンが活躍します。設計はパーソ
ナル・コンピュータが使われています。

 今後の課題として指摘されていたことは、
     1.ゲストティーチャーの確保の困難(授業時間との調整)。
     2.ポートフォリオの活用と自己評価支援のための確保。
     3.選択教科としての内容を必修教科とどう関連させていくか。
などでした。

 3.については「機械」に関する学習内容をはじめから選択教科の内容として位置づけているところに疑問を感じました。いわゆる「機械領域」の学習内容については、技術科の学習内容では中心として位置づけていく必要があると考えています。今後の学習指導要領の改訂では、これまでの領域による束縛を受けなくなるため、これまでの「機械領域」の学習は「材料・加工」の学習とあわせて系統的にできるようになると思いますし、そうしていくべきであるでしょう。現在の学習指導要領での領域の時間制約のためにできなかった「機械領域」の学習をきちんと位置づけていくことを推進していくべきだと考えます。


会場で販売されていた技術科デジタル資料集です。教材研究に役立つ情報がたくさん納められています。

形状記憶合金の入手について
   心材(未記憶)、バネ材(直径5mm、長さ20mm程度・・・加熱(湯)利用)
    →協伸特殊金属(古河電工代理店) 電話:03−3755−4101
   フィラメント状バネ(乾電池程度の通電加熱で動作)
    →トキ・コーポレーション(東京都大田区大森北3丁目43−15) 電話03−5763−6121

ゲスト・ティーチャーとして協力していた「トキ・コーポレーション」についてはこちらをクリックしてください。


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編集後記
 茨城県石岡市までは、車で片道4時間でした。長い道のりでしたが、石岡中学校の生徒たちの楽しそうな学習の様子を見ることが出来て疲れも忘れてしまいました。生徒たちの発想の豊かさとそれを引き出すことができた授業は、たいへん参考になりました。