おもしろ分解博物館
自動車(SUBARU BC5<LEGACY RS−R>)
SUBARU(富士重工)
EJ20G型ターボエンジン
水平対向4気筒・DOHC 4カム16バルブ 水冷式インタークーラー 2000cc
SUBARU(富士重工)・EJ20G型ターボエンジン | ||
総排気量 | 1994cc | |
内径×行程 | 92mm×75mm | |
弁機構 | DOHC | |
バルブ総数(1気筒バルブ数) | 16(4) | |
燃料供給方式 | EGI | |
点火方式 | 電子式1プラグ1コイル | |
圧縮比 | 8.5 | |
最高出力 | 220PS/6400rpm ※ 5MT(マニュアル・トランスミッション) |
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最大トルク | 27.5kg・m/4000rpm | |
点火順序 | 1−3−2−4 | |
燃料噴射方式 | (主)シーケンシャル (副)同時噴射 |
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全長×全幅×全高 | 540mm×810mm×640mm | |
整備重量 | 157kg |
富士重工がSUBARU BC5(LEGACY RS系)に搭載するために全面新設計したエンジンで1989年から製造が始まったものです。このEJ20G型エンジンは、大容量高速型ターボチャージャーと大容量水冷式インタークーラーを採用した高回転・高出力のエンジンです。このエンジンを搭載したSUBARU BC5(LEGACY RS)は、1989年1月2日〜21日にかけて米国アリゾナ・テストセンターで10万キロ世界速度記録を達成し(市販車ベースの車両で10万キロを447時間44分9秒887で走破、それまでサーブ9000の記録していたものを大幅に更新しました。平均時速223.345km/h、2001年6月現在も記録を保持)、その高い信頼性を実証しました。またSUBARU BC5(LEGACY RS)をベース車両として1990年世界ラリー選手権(WRC)・サファリ・ラリーで市販車に最も近いグループNでWRC史上初の完走(グループNクラス優勝)、SUBARU BC5(LEGACY RS−RA)をベース車両として1993年世界ラリー選手権・第8戦ラリー・オブ・ニュージーランドで総合優勝を達成しています。現在、市販されているスバル・レガシィ、インプレッサに搭載されているエンジンや世界ラリー選手権で活躍しているインプレッサに搭載されているエンジンも、このエンジンの開発の流れの延長線上にあります。
SUBARU LEGACY WRC Group A
SUBARU Impreza WRC2002
※ペーパークラフトです(^^)
ちょっと、一息(^^)・・・・本の紹介 | ||
サービス・マニュアル SUBARU LEGACYのすべてがわかります! |
SUBARUのPR誌「カートピア」には、 メカニズムやそれらを開発したエンジニア の人たちの話題が掲載されています。 現在(2001年)は 「美しきスバルメカニズム」がシリーズ で毎月掲載されています。 (※2000年は「開発エンジニアの肖像」 が掲載されていました。) |
SUBARUがレガシィ、インプレッサ でWRC(世界ラリー選手権)へチャレ ンジしていったようすやエンジニアた ちの努力が描かれています。 交通タイムス社 1998年 |
写真のエンジンはまもなく教材用として取り外す予定のEJ20G型エンジンです。このエンジン本体は大きなトラブルもなく30万キロ走行しました。車両の老朽化のため廃車となるのを機会に教材用の実物として車体から降ろします。
シリンダー配列が水平対向であること、ターボチャージャーなどのエンジン補機類、そしてなによりも実際の原動機に触れることが教材として大きな効果につながると考えています。
2001年6月下旬〜7月上旬の予定で取り外しますので、その後にページの更新を行います。レポートをお楽しみに!(^^)
2001年11月8日 「EJ20G」エンジンがやってきた!
30万kmを走り抜いたエンジンです。
2001年11月13日 技術科での学習用として整備を開始!
はじめに、油除去用の洗浄剤「レクトラクリーン」や、潤滑剤「CRC 5・56」を使っておおまかに汚れを落としておきます。
2001年11月17日〜27日 さあ、いよいよ分解です。(原動機の学習で分解・組立が自在にできるようにするための整備です。)
まずは、エンジンの下の部分から・・・ | ||
オイルフィルターの取り外し(オイルフィルター・レンチを使います) オイルフィルターはオイルクーラーに取り付けられています。 |
エクゾースト・マニホルド と ジョイント・パイプ |
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この金属製ガスケットは多層構造 | ジョイントパイプ | |
インシュレーターの内側には、 耐熱材が入っています。 |
ジョイントパイプのこれは、 何のため?・・・ |
エクゾースト・マニホルドに装着されて いる酸素(O2)センサー |
酸素(O2)センサー、BOSCH製でした。 | エンジンを逆さまにして、オイルパンを取り外します。 | |
オイルパンに手を入れて、オイルストレーナーと、それが取り付けてあるステーのボルト5本を取り外したりゆるめたりして、 オイルパンを外しました。あっ、オイルレベルゲージのガイドを固定するためのステーがエンジン上部にボルトで固定されて いるため、それも外しておきます。引き抜くときにはステーを曲げておくと、途中のパイプ類を外さなくて済みます。 オイルパンを上手にスライドさせればオイルストレーナーの取り付けボルトを外さなくてもいいのでしょうけれど・・・ |
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このカバーの下に クランクシャフトがあります。 |
エンジンを下から見たところです。 | 次はターボチャージャー (排気タービン側) |
それともクラッチディスク (クラッチカバー、フライホイール) |
どこにしようか・・・ | インテーク・マニホールドにするか・・・・ |
To be continued・・・(^^) |
2001年11月29日 ターボチャージャー、インテークマニホルド
君は「ターボチャージャー」を見たか | ||
カバーを外すとクランクシャフト、ピストンのコネクティングロッドが見えます。 | ||
オイルクーラーです。 ここにオイルフィルターが付きます。 |
エンジンマウント部 ここで車体のシャーシに固定されます。 緩衝材としてゴムが使われています。 |
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ワンポイント・アドバイス 外した「ネジ」は、すべてもとの位置につけておきます。こうしておけば、どこのネジかはっきりします。 |
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逆さまにしてあったエンジンをもとにもどします。 | ||
スロットル・バルブ アクセルペダルを踏み込むと、このスロットル・バルブが開いてたくさんの空気が 流入し、エンジンの回転数が上がります。 |
次は、ターボチャージャー | |
ターボチャージャーの取り付けボルトやパイプ類を外して、ターボチャージャー(過給器)を取り出します。 | ||
ターボチャージャー! ハウジングは吸気側がアルミニウム合金 排気側は高温になるため鋳鉄 |
ターボチャージャーのトップメーカー IHI(石川島播磨重工業)製 「IHI Turbo」の表示がありました。 |
カバーを外すと吸気側のタービン翼が 見えます。 |
吸気側 | 排気側 吸気側と排気側とでは、タービン翼の 形状が異なります。 |
タービン翼の見える部分から空気が入 って、写真の上方向へ出てインタークー ラーへ・・・ |
排気のタービン付近には、バイパス用のバルブがありました。 | ||
ワンポイント・アドバイス パイプ類やカバーなども、部品に取り付 けておくと、部品どおしの接続関係がは っきりします。 |
エクゾーストマニホルドとターボチャージャーのジョイントパイプを取り外します。 | |
点火プラグのコードです。 | 燃料噴射装置を外します。 | |
燃料噴射装置 | ||
インテークマニホルドにはパイプ類やセンサ、配線コード類がたくさん接続されています。 エンジンブロックとインテークマニホルドが分離できました。 |
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さて、次は・・・
〜2001年12月4日
点火プラグ・コード | ||
左右のバンクを連絡する冷却水パイプ | ||
クラッチ・カバーとクラッチ・ディスク ※30万キロ走行で2回交換したことになります。 |
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エンジンブロックに エンジン型式「EJ20」の表示 |
エンジン・オイルの注入口です。 異物が入らないようにパッキン部分が網状になっていました。 |
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カム・カバーを外すとカム・シャフトが姿を見せます。 | ||
カムシャフト と タイミングベルト・スプロケット |
カム | カムシャフトを取り外した後は、 再び部品を組み立てておきます。 |
シリンダーヘッドのボルトは 高トルクで締結されているため、 トルクレンチを使います! |
シリンダーヘッドは6本のボルトで取り付けられていました。 (左右合計12本) |
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シリンダーヘッドを取り外します。 バルブを見ることができます。 |
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エンジンブロックには、左右のブロックの組み合わせを示す刻印があります。 | ||
エンジンを分解しながら、その構造に驚き、あらためて言葉を失いました・・・・
さらに分解は続きます。
シリンダーヘッドとカムシャフト | シリンダーヘッドの取り外し後 |
2001年12月6日
クランクシャフトのスプロケット と タイミングベルト |
カムシャフトとスプロケットを外すには、 カムシャフトを固定して行います。 |
カムの隣に、固定するための突起があります。 |
タイミングベルトを駆動する、クランクシャフトに直結しているスプロケット | |
オイルポンプ | ||
特殊工具がなくても、フライホイールを外すことができます!(^^) | ||
エンジンブロックとトランスミッション(変速機)をつなぐためのボルトに「メガネレンチ」の片方を通し、もう一方をクラッチカバーの 取り付け用ボルトに固定して、フライホイールが回転しないようにします。トルクレンチを使って、フライホイールをクランクシャフトに 取り付けている8本のボルトを外します!(これは名案でしょう!!(^^)) |
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ここまで分解が進むと、持ち上げて机の上にのせることができます。(でも、まだけっこう重いですよ!(^^;)) | |
シリンダーの周囲には、冷却水(クーラント) が循環するための穴(ウォーター・ジャケット) がたくさん設けられています。 |
ピストン |
ウォーターポンプ | |
2001年12月7日
さあ!いよいよ左右のシリンダーブロックを分離します・・・ところがトラブル発生!(^^;)
エンジンブロックのボルトは非常に高トルクで締結されています。3本くらい外しては、少し休み、また・・・というように・・・(^^;)
あとボルト3本・・・というときに、ついうっかりして、ボックスレンチの差し込みがあまく、ボルトの頭をなめって(削って)しまいました。
深いところにあるボルトなので、焦りました(^^;)
低トルクで締結されている小さなボルトならば、いろいろやってみて最終的には「エキストラクター」(ボルト抜き)などが使えますが、エクステンションを使わなければ届かない深いところにあるボルト・・・それも高トルクとなるとどうしようもありません。
どうしようか・・・
分解やレストアを行う場合、オープンエンドのスパナはボルトを2面幅でしか捉えられないので使わないのが常識です。 (ましてモンキーレンチなどはプライヤーとしての低いトルクの固定などに使う程度です。スパナは基本的には低トルクの 締め付けに使い、緩めるときには使いません。) ボックスレンチやメガネレンチを使います。けれどもしっかりボルトに差し込まないとボルトの頭をなめって(削って)しまい ます。このエンジンブロックを締結しているボルトは、6面のボックスレンチが入らず、12面のボックスレンチ用のボルトが 使われていました。6面のボックスレンチのほうがしっかりボルトの頭を捉えることができるわけなのですが、作業のしやす さでは12面のほうがボックスの抜き差しが楽なわけです。 一般にボルトの頭をなめってしまった場合、1つ下のサイズのボックスレンチを圧入して対処しますが、12面のボックス レンチ用のボルトでは頭の形状が6面のものとはちがうため、寸法的に圧入は非常に難しくなります。まず無理です。 ここで使われているボルトには、12面ソケットレンチのサイズが12mmに対応していますが、11mmの12面ソケットを 圧入しようとしてもボルトの頭の形状のためできません。 そこで12mmの6面のソケットレンチを圧入することにしました。12mmの6面ソケットは差し込み寸法が9.5mmのもの しか手元になく、トルクレンチに差し込むために12.7mmへの変換ソケットをつけて、さらにエクステンションという3重連(^^) でトライすることになりました。 |
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ハンマーで6面のソケットをボルトの頭に 圧入します。 |
やったー!(^^) トラブルが上手く解決できると楽しいですね。 |
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ほっ!(^^;) 長いボルトですね。 |
12面(右)が6面(左)に成形(整形?) されています。 きれいに6面になっていますね(^^) |
さあ、いよいよ左右のエンジンブロックを 分離します。 |
ピストンだけを抜くこともできますが、 コネクティング・ロッドを付けたまま外す ために、クランクシャフトへの取り付け ナットを一部外しておきます。 |
ゆっくり分離していきます。 | |
かなり開いたところで、コネクティング・ロッド の残りのナットを外します。 |
ピストンをシリンダーから抜きます。 | 4気筒なので、このようなピストンが4つ あります。 |
クランクシャフト | 左右のエンジンブロック | |
こうしておおまかな分解は一段落しました。
技術室の机の上は部品でいっぱいです。(それも、ここにあるのは一部ですよ!)
次は、学習用に使えるように部品を洗浄したり、ボルト類を軽く締めた状態で組み立てていきます。
主要な部品はさらにいったん分解して、その構造を見ておきます。(紹介しますね(^^))
上の写真では、EJ20とEJ15のエンジンブロック周辺部品の一部が並べられています。
1つのページの画像数が多くなってしまいましたので、項目ごとに分類して整理した複数のページに変更したいと思います。
また、さらに主要な部品については、細かく見て紹介していきたいと思います。