宮崎正吉「工作機械を創った人々」 マシニスト出版
                                 1982(昭和57)年 A5・82p (500円)

 雑誌「機械技術」の1980(昭和55)年2月号〜1981(昭和56)年6月号に連載された「工作機械を創った人々」を1冊の本としてまとめたもです。著者の宮崎正吉氏は東京瓦斯電気工業(現在の日立精機)、新潟鉄工所、昌運工作所、三豊商事、アマダなどで工作機械に関する仕事を続けてこられ、国立小山工業高等専門学校で工業史を担当された方です。
 この本は、レオナルド・ダ・ビンチ(Leonardo da Vinci 1452-1519)、ヘンリー・モーズリー(Henry Maudslay 1771-1831)、ジョセフ・ホイットワース(Joseph Baronet Whitworth 1803-1887)、ジョセフ・ブラウン(Joseph Rogers Brown 1810-1876)、ウィリアム・セラーズ(William Sellers 1824-1905)、池貝喜四郎(1877-1933)、竹尾年助(1873-1956)の7人の人物を中心とした工作機械の技術史に関するものです。特に日本の工作機械の技術史に大きな足跡を残した池貝喜四郎(池貝鉄工所)、竹尾年助(唐津鉄工所)についてもまとめられているところが特徴といえると思います。また、ジョセフ・ブラウン(Joseph Rogers Brown 1810-1876)、ウィリアム・セラーズ(William Sellers 1824-1905)については、まとまったかたちで紹介されている文献が少ないようですが、ここでは比較的詳しく紹介されています。
 機械要素、機構、工作機械についても基礎的な内容が要領よくまとめられていて、初めて学ぶ人にとっても、丁寧な内容になっています。
 工作機械の技術史に関する文献は、
L・T・C・Rolt,'Tools for the Job,A Short History of Machine Tools,Batsford,London,1965.
などがありましたが、「工作機械を創った人々」が出版された当時は邦訳されてはおらず(L・T・C・ロルト(磯田浩 訳)「工作機械の歴史〜職人の技からオートメーションへ」平凡社1989年)、工作機械の技術史を中心としてまとめられた書籍は、ほとんど見あたりませんでした。また、日本工業大学工業技術博物館の開設は1988年ですから、国内の博物館で工作機械を系統的に集めている施設もありませんでした。この本の著者である宮崎正吉氏は、マンチェスター科学産業博物館、パリ技術博物館、英国立科学産業博物館(ロンドン科学博物館)、ドイツ博物館、スミソニアン歴史技術博物館、アメリカ精密博物館でも取材されたようです。
 工作機械や測定工具と、その技術史がたいへんわかりやすくまとめられています。


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