おもしろ分解博物館

自動車(SUBARU BC5<LEGACY RS−R>)

トランスミッション(変速機)

富士重工 TY752(TY752VB1AA)
フルタイム4WD用5速マニュアルトランスミッション

2001年11月8日 トランスミッションがやってきた!

30万km走り抜いて廃車となった自動車から取り外したフルタイム4WD用5速マニュアル・トランスミッション(変速機)です。

2001年11月13日 技術科での学習用として整備を開始!

はじめに、油除去用の洗浄剤「レクトラクリーン」や、潤滑剤「CRC 5・56」を使っておおまかに汚れを落としておきます。

2001年12月15日 さあ、いよいよ分解です。(機械の学習で使うための整備です。簡単に分解・組立もできるようにします。)

はじめに、トランスファ・カバーを外して、中を見てみました(^^)
ベアリング(軸受)とギアのシャフトが見えました。

2001年12月17日 ピンを外すことができました!

ギアシフト(シフトレバー)とトランスミッション(変速機)を連結していたブラケットに「スプリング・ピン」が入っています。
このピンは2重になっていました。おもしろいピンの使い方ですね!

4WD(4輪駆動車)でしたから後輪へ動力を伝達するプロペラシャフトが連結されていたエクステンションのカバーから外していきます。
トランスファ・ドリブン・ギアとスラスト・ベアリングを見ることができます。

トランスファ・ケースも外しました。

トランスミッション本体のケースは半分に分割できます。14本のボルトとナットで左右のケースがつながれていました。

※最新のスバル・インプレッサWRX-STi type RA(SUBARU GH-GDB)に搭載されているクロスレシオ6速マニュアルトランスミッションは、スバル・テクニカ・インターナショナルによって開発され、トランスミッション・ケースが胴割型3分割になっており剛性が高められています。280馬力のエンジンの最大トルクは35kgf・m(直径10mmの鋼棒は約6kgf・mでねじ切れます。35kgf・mのトルクの持つエネルギーの大きさに驚きです!)で、このときトランスミッション(変速機)の歯車の歯面には約1t(トン)の力が加わることになります。そのため、トランスミッション・ケースの剛性が重要になってくるわけです。

トランスミッションのメインシャフトとドライブピニオンが姿を現しました!
また前輪のドライブシャフトへ動力を伝えるデファレンシャルギア(差動歯車)や、クラウンギア、ピニオンギアなど各種歯車のオンパレードですね(^^)
シンクロメッシュ・トランスミッションの特徴的なパーツが並びます。歯車の回転数を同調させるためのシンクロナイザー・リングの構造もよくわかります。
デファレンシャルギア(差動歯車)は、手で簡単に回せるので、機械の学習で動きを見せるのには最適です。

赤い部分がスピードメーターへ回転数を伝えるスピードメーター・ドリブン・ギアです。
ラリー競技用車両に「ラリー・コンピューター」を装着するときに、ここへ専用のケーブルを差し込むわけです。なつかしい(^^)

分解した5速マニュアル・トランスミッション!

機械の学習で使いやすいように、一部を組み立て直しておきます。

カウンター・シャフトを介してフロント・デフとセンター・デフが並んで配置されています。

技術室では、このような形で展示しておき、機械の学習に使っていきます。

下の写真では、トランスミッションの右側がエンジン方向です。
クラッチを介してメインシフトへ動力が伝達され、カウンターシャフトでトランスミッション前部のフロント・デファレンシャル・ギア(オープンの差動歯車)と、後部のセンター・デファレンシャル(センター・デフ・・・・ここではビスカス・リミテッド・スリップ・デファレンシャル(ビスカスLSD)が使われています)へ動力が配分されていきます。フロント・デフからは、ドライブシャフトを介して前輪へ、センター・デフからがプロペラ・シャフトを介してリヤ・デフ、ドライブシャフト、後輪へと動力が伝達されます。

センター・デフ・・・・ここではビスカス・リミテッド・スリップ・デファレンシャル(ビスカスLSD)
カーブでの左右の車輪の回転差を吸収するのと同じように、フルタイム4輪駆動車の場合には、前後の車輪の回転差も吸収する必要があります。センター・デフは前後車輪の回転差によって生ずるタイトコーナ・ブレーキング現象をなくすはたらきをしています。センター・デフといってもプロペラ・シャフトの中間部分にあるのではなく、トランスミッション内に組み込まれているのです!(^^)

 このトランスミッションを技術室で分解整備していたところ、それを見ていた生徒の一人が、
 「先生、この機械、きれいですね!」
と声をかけてきました。そんなことに気づいてくれるだけでも技術科の学習用に準備した価値があると思い、思わず笑ってしまいました。(^^)
これが実物だけが持つ迫力ですね。ああよかった!・・・・


戻ります。