スターリングエンジンの製作
2001/07/25〜2001/07/26 at 土浦工業高校(化学室)
数年前から、ギジュツ・ドット・コムでの土浦工業高校の小林義行先生のスターリングエンジンへの情熱的な書き込みをみて、ぜひ一度教わりにいこうと県内の技術科の先生方とも話していたのですが、のびのびになっていました。そこに、小林先生自ら教師向けの講座を用意してくださいました。今回は、2001年7月25日から26日にかけて開かれたスターリングエンジン講習会について書きます。スターリングエンジンについては、小林先生が詳しい解説を書かれていますので、ぜひご参照下さい。→ http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/stirling/stirlingIntro.html
小林先生は理科の先生です。同じく理科を担当されている中島先生にも大変お世話になりました。講座は化学室と物理室で行われました。教師向けの講座を化学室で、小中学校生向けの講座を物理室で行い、かつ小中学校生向けの講座は、全て理科部の生徒達が担当して自主的に小中学校生を指導していました。そのやる気すごいです。子ども達を相手に彼らの目が一番輝いていたように思います。製作の中で必要になる道具の準備や材料の準備など理科部のみなさんの活躍には目を見張るものがありました。
教師向けの講座には、全国から技術科の先生ばかりでなく、大学の先生から一般の方まで熱心に参加されていました。日程の関係で2日とも参加できたのは、私を含めて2人、他の方々は1日で朝から夕方まで熱心に製作に取り組まれ、10人全員が自分のスターリングエンジンを回して帰りました。全員回ったというのがとてもすごいことです。(これまでのスターリングエンジンは回らないスターリングエンジンがいくつかどうしても出てきたものです。それが調整次第で全て回ってしまいました。)
県内の参加者が少な目だったのがちょっと残念ですが、スターリングエンジンが回った感動は、自分でやってみないとやはりわかりません。私自身講座を受ける前と、後ではスターリングエンジンのイメージががらりと変わってしまいました。小林先生、中島先生、来年の研修も楽しみにしています。ぜひぜひよろしくお願いします。
↑ 小林先生自作のスターリングエンジンの数々を、リアルビデオでご覧ください。↑
上の写真は今回教師向けの講座で作成したスターリングエンジンカーです。1つはピストン部分に従来から用いている注射器を用いているタイプで、もう一つは最近小林先生が製作に成功したベローズタイプ(スポイトの頭)のスターリングエンジンカーです。私は、注射器のタイプを製作しました。一番右の写真が私の作品です。ちゃんと回りましたよ。(^^) ビデオもみられるようにしておきます。→ 動いたぞ!
小林先生のスターリングエンジンの特徴は、なんといってもこのディスプレイサーです。一般的にスターリングエンジンというと過熱側と冷却側で別々の部屋が用意されその間をチューブなどで結ぶのですが、このディスプレイサーなら、試験管の中でスチールウールの束が動くことで、スチールウールと試験管の間を空気が通り抜け素早く熱い空気と冷たい空気のやりとりができます。ここまでたどり着くには様々な改良があったと思います。スチールウールを2mmのステンレス棒に巻き付けるにもノウハウがあります。また、スターリングエンジンを動かすには、試験管の口の側を下にしたとき、このディスプレイサーが自分の重みだけで下がってくるぐらいの精度がなくてはなりません。ステンレス棒は、真鍮のパイプでスライドさせます。ゴム栓の中央に取り付けますが端のバリが削れていないとなめらかに動きません。私はこのコツを飲み込むのに1時間かかってしまいましたが、しかし、一度こつを飲み込めば、誰でもできるようになります。画期的はディスプレイサーといえます。
作り方については、小林先生の書かれたこのページが詳しいです。→ http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/stirling/makeNoBB/makeNoBBindex.html
注射器型の問題点は、注射器の加工です。なぜ加工が必要かというと、高回転でもピストンとディスプレイサーの間をいったりきたりする空気が抵抗にならないようにするために、注射器の先端を切り落とし、4mmの真鍮パイプ(内径約3mm)を取り付けるからです。またピストンの頭の部分の直系が全体より少し大きめに作られています。本来の注射器の目的からすれば、そうしなければ漏れてしまうのですけど、スターリングエンジンでは、それ以上になめらかに、できるだけ抵抗が少なく動くことが必要です。さらにこだわれば必要のない部分はない方がいいわけで、とにかくガラス製の注射器を切断することになります。少々面倒ですが、上の写真のようにリーマーを使って地道に5分ぐらいかけて削り落とします。スライダークランク機構の一部にするためには注射器にネジをつなげる必要があります。今回は図のようにアルミのアングル材を1cmほどに切って使いました。接着にはエポキシ樹脂系の2種混合の接着剤を使います。
ベローズ型の問題は、ストロークの短さです。今回試作したものでも、ストロークは2〜3cm程度しかありません。ということはクランクは1〜1.5cm程度になってしまいます。またベローズとリンクを接合するためにはベローズの頭に穴をあけネジどめする必要がでてきます。ここらへんの工夫にはうならせられるものがありました。みなさんもぜひ講習会でじかに体験してみてください。
そして最後にリンクの部分ですが、同じく2mmの真鍮棒を曲げてクランクにしたり、硬質のプラスチック板を切って製作します。最後のディスプレイサー作動側のロッドにはなんとストローを使ったりします。これには理由があります。最後の最後で細かな微調整ができるだけしやすいようになっているのです。作るのは大変ですが、一度作ってしまうと自分なりの工夫ができるようになっていきます。一度こうした講習で製作されることをお薦めします。自分でつくってからならば、自分なりに工夫できます。中学校の授業で取り組んでみたいという方、ぜひ次回の講習会に参加されてみてください。きっと忘れられない経験になります。
そして2日目、みなさんが1台目の作業をしている中、私だけ小型のマシンの製作にチャレンジさせてもらいました。左が小林先生のオリジナル、右が私がコピーしたマシンです。手のひらサイズの小さなマシンで、スターリングエンジンテクノラリー(年に一度開かれるスターリングエンジンの大会)ではミニ4駆のコースを走らせてそのタイムを競います。私のマシンはエンジンは問題なく作動しましたが、軸の取り付けが甘く、素早く動くというところまではできませんでした。しかし、なんとか動くところまではできました。(^^)
このマシンは、注射器型のマシンです。ストロークが短いことなどを除けば、機構的な違いは全くありません。腕の長さほどもあったものを手のひらに収めるために様々な小型化の工夫がされています。小林先生のマシンはベアリングを使うなど本格的な仕様です。私のマシンは、分解組み立てを何度でもして調整が可能なように作ってみました。実際細かなところで調整が必要な場合、バラバラにできることはとてもメリットが大きいと感じました。小林先生のマシンを参考にしたので、無駄なくつくることもできました。動輪の軸の系がゆるく動きが多少ギクシャクしていることがちょっと残念ですが、ベアリングを使わないわりには、よくできたと自画自賛しています。
小林先生のマシンと、私のコピーマシンの比較です。何を改良すれば性能が上がるのかがわかってきたように思います。この夏休みさらに改良を加えて、ミニ4駆のコースを実際に走らせてみたいと思います。さらに実際の授業での実践へとつながっていくのですが、さらにシンプルなマシンに改良をしばらく続けていきたいと考えています。私としてはこの手のひらサイズのマシンにすごくひかれています。もっと簡単に作る方法をなんとかあみだせないか、この夏、チャレンジしてみます。小林先生、中島先生、お世話になりました。こうした機会を設定していただき本当にありがとうございました。
茨城県北相馬郡藤代町立藤代中学校 川俣 純