ベルヌーイの定理2


 あの重たい飛行機がなぜ空中を飛ぶことができるのでしょうか?「揚力」がはたらくからと言ってしまえばそれまでですが、その揚力とは何でしょうか?翼の断面図を見ながら考えてみましょう。飛行機の翼は図のように上面の方が下面よりも少し膨らんでいます。すなわち、上面の方が下面よりも少し長くなっているのです。それでは、翼の前方で上下に分かれた空気はどのような運動をしているのでしょうか。もし前方で分かれた空気がa点からb点まで同じ速さで進むとするならば、下面の空気の方が上面よりも速く後方に到達することになります。しかし、実際にはそうなってはおらず、前方で
分かれた空気は同時に後方へ到達することがわかっています。ということは、翼の上面の空気の流れの方が下面の空気の流れよりも速いということになります。
 ここでベルヌーイの定理が登場するのです。つまり、上面の空気が下面の空気より速いということは、上面の圧力の方が下面の圧力よりも小さいということになるのです。定理1で実験を交えて説明しましたが、圧力というものは、「差」が生まれるとその威力を発揮するのです。すなわち、この場合は翼の下面から上面に力がはたらき、この力のことを「揚力」と呼んでいるのです。


揚力を実感する
beru8.gif (17046 バイト)beru5.jpg (5799 バイト)

 風洞実験装置に翼模型を設置して、数カ所から細いチューブを伸ばして水中マノメータに接続します。圧力が変化した点のマノメータの水位はストローで水を飲むときのように変化をします。この点を数カ所取り、全体的にグラフ化などすると、揚力をより実感することができます。写真は発砲スチロールで製作した翼の断面に画用紙を貼ったものですが、扇風機の前でも揚力を体感することができます。


変化球はなぜ曲がるのか?
beru7.gif (26283 バイト)beru6.jpg (7740 バイト)
 揚力を説明したついでに変化球についても考えてみましょう。これもまたベルヌーイの定理から説明することができます。まず、ボールが回転しながら前方に進んでいることを考えて下さい。このときボールのある面はボールの進行スピード+回転のスピードがかかり、ある面はボールの進行スピード−回転のスピードがかかります。
 つまり、ボールの各部分で速度差が生じているのです。何度も述べているように、速度差が生じると圧力差が生じることになります。そのために、ボールはいろいろと変化をするのです。
 写真は変化球の特性を調べるための実験装置です。発砲スチロールの球をモータに取り付けて回転をさせます。これを風洞実験装置の内部に入れて風を送ります。このときの風速をピトー管で、回転数をストロボで、ボールの揺れを分度器でそれぞれ測定し、それらの関係を求めました。


投稿者:東京都 東京工業大学工学部付属工業高校 門田和雄

戻る