ベルヌーイの定理1
2003年10月7日 更新
流体はその流れの各点において、基準面からの高さによる位置エネルギー、速度による運動エネルギー、圧力エネルギーを持っている。これらのエネルギーは流れの状態によって相互に変化をしながら、総量は保存される。これをエネルギー保存の法則といい、それぞれのエネルギーを水1kgあたりと考えたものが一定であるという定理を「ベルヌーイの定理」という。
この定理の実感しにくいところは、「流体の速度が速いところほど、流体による圧力が小さくなる」という部分です。しかし、飛行機がなぜ飛ぶかという揚力の説明をするためにはこの説明は欠かせません。以下の実験でこの定理を実感して下さい。
- 風船が2つ並んでいます。この風船の間に息を吹きかけると風船はどうなるでしょう。
答え:二つの風船はお互いに近づく。
風船の間の空気の流れが周りよりも速くなるため、その部分の圧力は小さくなる。そのため、圧力の大きいところから小さいところへ力がはたらくことになり、風船はお互いに引き寄せられることになる。
- 両端を折り曲げた名刺が二通りの置き方で並んでいます。正面から息を吹きかけたとき、遠くまで飛ぶのはどちらの名刺でしょうか。
答え:オレンジ色の名刺が飛び、水色の名刺は床に吸い付けられる。
水色の名刺の中に入った空気の流れは周りより速くなるため、この部分の圧力が周りよりも小さくなる。そのため、圧力の大きいところから小さいところへ力がはたらくことになり、水色の名刺は床に吸い寄せられることになる。オレンジ色の名刺は圧力差が生じる部分がないため、ただ吹き飛ばされるだけである。
- スプーンの表・裏をそれぞれ水道の水に近づけていくとき、水道の水に引き寄せられるのはどちらのスプーンでしょうか。
答え:スプーンの裏(左の写真)に水をあてると引き寄せられる。
スプーンの裏の湾曲している部分に沿って流れる水は他の流れよりも速度が速くなるため、この部分の圧力は周りの部分よりも小さくなります。そのため、圧力の大きいところから小さいところへ力がはたらくことになり、スプーンは吸い寄せられることになる。スプーンの表の湾曲している部分に沿って水を流すことは難しく、ただ水をはじくだけである。
●修正
この実験の説明についてご意見をいただきました。ありがとうございます。検討の結果、以下のように修正、追加をします
スプーンの裏の湾曲している部分に沿って流れる水は周りの空気の流れも速くするるため、この部分の圧力は周りの部分よりも小さくなります。そのため、圧力の大きいところから小さいところへ力がはたらくことになり、スプーンは吸い寄せられることになる。
注)スプーンが水に接触してから、さらに吸い寄せられることは、水の表面張力の影響もあります。
東京都 東京工業大学工学部付属工業高校 門田和雄
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