売り込む棚づくり
〜プレゼンテーション編〜
2003/02/06


 ものを作る経験の少ない子供が増えてきたように思います。最後まで粘り強く製作に取り組めなかったり、「買ったほうが早いし・・・。」と言って意欲を見せなかったり、と、完成度の低い製作品になってしまうことが少なくありません。一年生の「A:技術のものづくり」の分野において、どうすれば全員が最後まで、しかもていねいに製作品が仕上げられるかと考えていた時、京都の同志社中学校の沼田先生の実践「売り込む棚づくり」に出会いました。

 

 導入

 初めにいつも通り(?)製図の学習や導入教材「2×4材を利用した鉛筆立て(一人あたり20円くらい)」でのこぎりやかんな、などの学習をし、その後、製作の話に入っていきます。最後にはコンピュータでチラシを作ることを前もって伝えています。「例えば、みんなが持っているふでばこ。なぜ、みんなはそれを選んだのだろう?」モノが商品化されるまでの過程やどんな商品が良い商品、売れる商品なのだろうか、と製品ができるまでの過程をおおまかに学習します。

 市場調査と構想

 商品企画部の仕事ということで、おうちの方をお客様に見立てて、調査を行います。「どんなものがわが家に必要か?」と使用目的や大きさ、デザインなどの要望を聞き取ります。それをもとにフリーハンドでいくつも構想図を描き、最後に決定したデザインをすでに学習したキャビネット図や等角図で正確に描き表わさせます。ヒントとして前年度までの作品のデジカメ写真リストをラミネートしたものを教室前廊下に掲示し、技術の授業がなくてもいつでも目に入り、参考になるようにしておきます。必要があれば解説カードを一緒に掲示します。材料は210mm×1200mm×12mmの板材と300mm×300mm×3.5mmのコルクボードです。自分で材料を選び、調達することができればまた学習の幅が広がると思いますが、今回は決まった材料でできるだけ無駄なく設計するように心がけます。

 材料取り

 材料を4分の1程度に縮尺した枠の書いてあるプリントに実際にどのように材料取りしていこうかと考えます。下書きが描けたら私のチェックを受け、清書に移ります。一度で清書できる生徒もいれば、自分の思い描いているような作品にするためにどうすれば板がとれるのかと時間をかけて考え、何度も何度も私と相談して描き直す生徒もいます。製作時間も限られているため、自分の技能とも相談しなければなりません。

 製作

 全員分のチェックが終わり、いよいよ製作。一人一人製作品が違うので進度もさまざま。しかし、みんなが自分の大切なお客様の商品を作っているわけですから、慎重に心を込めて作っています。これだけでも設計図が最初から決まっている製作品を作っていた時よりはずっと意欲があるように思われます。しかし、どうしても難易度さまざまで時間内にできない生徒もあり、放課後に時間を確保して取り組ませることもあります。

 写真撮影

 塗装も終わり、デジタルカメラで製作品(商品)の写真を撮ります。今回は撮影場所に適したところが見つからず、仕方なく作業台の上に白のボール紙を敷いています。でも、これで十分ですね。自分で撮影する生徒、撮影の角度を指定する生徒、実際にCDや本を収納して撮影する生徒などなど・・・。一人一人にこだわりがあります。

 広告づくり

 全員分の写真撮影はそうそう簡単にはいきません。塗装にも時間がかかるため、乾燥を待つ間や写真撮影を待つ間などを利用して、実際の広告はどのようになっているのか、お客様にどうやって商品を印象づけているのか調べ、まとめます。例えば値段の下にはギザギザの爆発マークが使われていることが多い・・・など。そして自分の広告のデザインのアイデアスケッチをしていきます。今回、一緒に広告を調べていて生徒が発見したのですが、値段の表示はすべて赤色の字、または赤地に白抜きだったのです!どの広告もそうだったので、驚きました。生徒の作る広告もそれに習い、ほとんど赤色で値段が書いてあります。

 写真撮影が全員分終ったところでコンピュータ室に移動します。広告作りにはプレゼンテーションソフトを利用しました。図形や文字の配置が簡単にできるためです。時間があれば写真画像の加工やトリミングもしてみたかったのですが、今回はそれはなし。早くできた生徒はアニメーションを設定したりして、どんどん広告がユニークになっていきます。一応、評価はアニメーションなしの状態で行うことを約束してあります。広告作品発表会は提出されたファイルを私の方でつなげておき、一時間の授業の中で一人あたり、1分程度でどんどん紹介していきます。クラスによっては激安が流行ったりもしました。全員分の広告がどんどん発表されると同時に生徒は自己評価、相互評価をします。広告としての機能はどうか、商品を十分にアピールしようとしているかなど5項目です。自分の広告が流れている間、言い足りないことがあったりした場合は、口頭で申し添えても良いことにしておきました。しかし、自分の広告がパッと現れた瞬間ははずかしさもあると思いますが、まわりの生徒の反応を楽しんでいたように思います。誰もつけ足したりしませんでした。初めにソフトウエアの基本的な操作方法を説明するときに使った広告や、アイデアスケッチの時に例にあげていた私の作った広告とは全然違い、全員がとてもユニークなアイデアや色遣いをしていてこちらも授業をしていて楽しかったです。


↑生徒作品(全部で8点掲載)

 ←恥ずかしながら、私が例であげていた広告。

また、この実践は次にも紹介されています。

ITの授業革命「情報とコンピュータ」』(東京書籍)村松浩幸他編 2000年12月発行

第1章1節の5、売り込む棚づくり 田渕 洋子

Webページでサポートされています。こちら

CD-ROM版技術科教育実践講座(ニチブン)Vol.5 「情報とコンピュータ」の学習指導 「売り込む棚づくり」田渕 洋子」

2002年秋発売

指導計画表はここに収録されています。

授業実践事例CD-ROM =中学校編= Ver.1.0 (社団法人 日本教育工学振興会 平成13年3月発行

〜〜 文部科学省 コンピュータ・インターネットの授業実践事例集 〜〜(全国の各中学校に配布されていると思います。)

技術・家庭科 B:情報とコンピュータ「見て!見て!作品広告をプレゼンしよう!」田渕 洋子  


投稿者:滋賀県守山市立守山北中学校 田渕洋子

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