「違う種類の金属で電解質水溶液を挟むと電池になる」開隆堂の教科書にも亜鉛板と銅版をレモンに差したレモン電池が紹介されています。では、10円玉(銅)と1円玉(アルミ)の間に、藁半紙にしみこませた食塩水(電解質水溶液)をはさむだけで、電池になることはご存知でしょうか?
藁半紙を10円玉の大きさに切り抜いて、飽和食塩水につけます。十分にしみこんだところで、10円玉の上のせて、さらにその上から1円玉をのせます。テスターで電圧を測定してみると、11円で約0.5Vの起電力があります。
「0.5Vじゃなにもできない・・・」
ごもっともなご指摘です。しかし、0.5Vを甘くみちゃいけません。同じようにつくった11円電池を重ねていくといくらでも電圧を上げることができるのです。11円電池を8段ぐらい積み重ねると、発光ダイーオードを点灯させることができます。高照度の発光ダイオード(¥200程度)を使うととても明るくつきます。
授業では、10円玉と1円玉をできるだけたくさん用意します(銀行の両替機を使うと、きれいな1円玉と10円玉が、いっきに多量に入手できます)。どんどん積み重ねて何Vになったか班ごとに競わせると・・・「4V」「6V」なんていう声は、すぐに聞こえてきます。ある班が12Vまでいくと、あれほどたくさん用意した1円玉と10円玉はなくなってしまいました。
しかし、これで終わりではありません。隣の班と協力してさらに高電圧をめざします。隣の班の11円電池のタワーをそのままもってきて上に重ねてしまいます。それだけで、電圧はいっきに倍です。さらにもう一つの班の11円電池のタワーを重ねれば3倍です。
私の授業でのこれまでの最高記録は36Vにもなりました。恐ろしいほどの電圧ですが、電流はあまり流れないので、危険性もありません。そしてなにより、この電圧は、生徒同士の協力がないと実現できないものです。考えてみて下さい。11円電池は、0.5Vです。36Vを実現するためには、36÷0.5=72ですから、72枚の1円玉と、72枚の10円玉の間に藁半紙がはさんであるわけで、11円電池のタワーの高さは30cmを軽く超えています。3〜4人の生徒が11円電池を手で支えながら、他の生徒がテスターで電圧を測定します。まわりは黒山の人だかりです。
自分のつくった11円電池が36Vの一部になっている。全員とはいきませんが、クラスで一つのものをつくりあげる、そんな楽しさがこの11円電池にはあります。
投稿者:茨城県筑波郡谷和原村立小絹中学校 川俣 純
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