電話回線をつないでネットワークを考えよう
更新日:平成16年2月28日
ネットワークの授業というと、電子メールを使った授業や、ページの検索をするような授業をイメージします。 でも、ネットワークの仕組みは使ってみるだけでは決してわかりません。説明を聞いても実感がわきません。ならば通信の歴史をひもとき、その昔に遠距離電話を交換手さんがつないでくれたように、回線を手でつなげていくことで「つなげていく」という実感をもたせたいと考えました。 班ごとに用意した交換機を使って電話回線を接続する実習に取り組ませた後、左の写真のように作業台に電信柱を立て、交換機同士を接続します。 直接接続されている班だけではなく、直接接続されていない班との間でも、途中で回線を中継してもらえばつなげることができます。 |
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電話ができたばかりの頃、回線をつなげていたのは全て交換手さんでした。電話をとって交換手さんに「東京の○○ー○○○についないでください。」といった具合にお願いするわけです。すると交換手さんが、依頼された番号の電話機を管理している交換手さんまで電話回線をつなげていき、ようやく回線をつなげると、今度は交換手さんから電話がかかってきて「つながりました。おつなぎします。」といわれてようやく相手と話すことができました。 私よりも年配の方ならば、国際電話など交換手さんにつなげてもらった経験があるのではないでしょうか。 3〜4台の電話機ならば、交換手さんの仕事は簡単です。電話をうけてジャックを差し替えて、相手の呼び鈴を鳴らして、電話がかかっていることを伝えて、電話をかけてきた人に再度つなげて、回線をつなげますといった後に、2台の電話機のジャックを接続するわけです。 |
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教室中の電話機が接続されたらどうでしょうか。1台1台の電話機に番号がなければ、接続することはできません。そこで、教室内の電話網をつくって、各電話機に電話番号をふります。1班ならば、01−001、01−002、01−003といった具合です。授業では、電話帳をつくって誰が何番かがわかるようにして実習に取り組みます。 直接接続されていない班でも、交換機から交換機へ中継するように接続すれば、教室中のどの電話機へも電話をかけることが可能です。実際にはいろいろと大変ですけれども(^^;) 頭上に張られた電話線を目で見て確認しながら回線を接続していくと、回線をつなげるという感覚をつかませることができます。 現代の電話回線はコンピュータによって自動化された交換機によってつながれています。そして、よくよく考えてみると、電話番号の市街局番や市内局番は交換機の番号であることが納得できると思います。その昔交換手さんがつないでいた回線を、自動的に瞬時につなげることのできる仕掛けになっています。 |
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で、これがネットワークにどうつながるの? という人も多いのではないでしょうか。でも関係大ありなのです。 インターネット上ではTCP/IPという決まりで通信を行っています。もっとかみ砕いていうと、インターネットにつながっているコンピュータには全て番号がふられています。これは本当の話です。「 192.168.1.15 」などといったように3桁の数字を4つ並べて書かれた番号をご存じの方も多いのではないでしょうか。これがIPアドレスと呼ばれる番号です。(グローバル、プライベートの違いはここでは割愛します。) 番号があるから相手を特定することができ、アメリカのサーバー上のWebページでも、フランスにあるWebページでも瞬時に接続して、様々な情報を得ることができます。なにも http://www.kantei.go.jp/ と打たなくても、http://202.232.190.90/ と打ってもいいわけです。 難しい話を抜きにして、単純に考えると、電話交換機網で回線をつなげていくイメージから、ネットワークを考えるとかなりすっきりと考えることができます。ネットワークは、既存の様々な通信技術を接続して、連携させることで実現しているものなのです。もちろん、デジタルや分散型ネットワークとスター型ネットワークの違いなどまだまだ違いはあるのですが、つなげていくという視点でみていくと、ネットワークを体験を通して実感をもって捉えていくことが可能です。 この授業の後ならば、コンピュータ室での授業をした時に、コンピュータ室のPC全てが床下の配線で接続され、コンピュータ室のサーバーを経て、インターネットに接続されている・・・などとったことにふれることもできます。そして、何気なく使っているインターネットの世界で今起こっている様々な問題や、これからのIT時代の社会を考えるさせるためには、こうしたネットワークの仕組みを体得しておくことが必須なのではないでしょうか。 |
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この授業は、「ためしてわかる通信とネットワーク」の16時間のカリキュラムの中の一部です。ぜひこのテキストもご覧になってください。http://www.ne.jp/asahi/tech/gikyouken/publication/tushin/index.htm |
投稿者:茨城県北相馬郡藤代町立藤代中学校 川俣 純
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